執筆者:井本 かおり(管理栄養士)
いよいよ年の瀬ですね!
そろそろお正月料理の準備をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
正月は普段あまり食べることのない料理が並ぶので、体調が崩れないか少し不安です。
お正月が待ち遠しいこの季節、おせち料理をどうしようか検討されている方も多いことでしょう。今回のコラムでは、潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)の方でも安心して楽しめるお正月食材の選ぶポイントと、グッテレシピからは美味しいレシピをご紹介します。
お正月食材の選ぶポイントを1つずつご紹介していきます!
焼き魚
おせち料理では出世するという意味で使われるぶりは、鯛や鮭など白身魚に比べると脂質量は3倍程多くなります。IBDで脂質を抑えたい方はぶり以外にお祝いの魚として使われる鯛や鮭に変えるのも選択肢の1つです。同じ鮭でも寿司や刺身に使われるサーモンは脂質が高くなります。
ー グッテレシピから ー
かまぼこ
かまぼこは低脂質で高たんぱく質の食品です。
低FODMAP(フォドマップ)食をされている方は還元水あめやソルビトールなどの人工甘味料、大豆由来のたんぱくが使われている場合があり原材料表記を確認して下さい。
伊達巻
市販の伊達巻は脂質約6g/100gあたりと比較的脂質の量は多くない食品です。また卵や白身魚のすり身で出来ていて腸への負担は少ない食べ物です。
低FODMAP食をされている方は甘味料、昆布やしいたけエキスが入っていないか確認をします。
煮しめ
IBDで脂質を抑えたい方は鶏肉はむね肉の皮なしを選ぶようにします。また、人参や里芋、大根など消化管に負担がかかりにくい食品を選ぶようにしましょう。筍、ごぼう、こんにゃく、きのこ類などは消化管への負担が多いため注意が必要です。
低FODMAP食をされている方はきのこ類や高FODMAP食の野菜は少量にとどめるようにします。また、市販のおせち料理にはしいたけや昆布だしが使われている事が多い事からそれらで症状が出る方は注意が必要です。
ー グッテレシピから ー
田作り
カタクチイワシの稚魚で作られていて、別名ごまめとも言われています。
IBDの方は市販品にゴマやクルミなどの種実類が含まれている場合は、消化管への負担が大きいため控えるようにしましょう。またしっかりよく噛んで食べるようにしましょう。
低FODMAP食をされている方はゴマやくるみは低FODMAP食です。しかし、ナッツ類は脂質が多く消化に時間がかかるため、体調に合わせて量を加減してください。
松風焼き
鶏ミンチと調味料をハンバーグのようにこねて四角く焼き、表面にケシの実をまぶしたものです。
IBDで脂質を抑えたい方は鶏ミンチは脂質の少ない部位を選びます。
また、けしの実はゴマなどと同じ種実類の食品です。IBDの方は消化管への負担が大きいため控えるようにしましょう。
ー グッテレシピから ー
かずのこ
かずのこは高たんぱく質の食品で脂質は3.0g/100gと白身魚と同じ程度の量です。
IBDの方は少量ずつしっかりよく噛んで食べるようにしましょう。
低FODMAP食中の方は市販の味つけ数の子には昆布だしや高FODMAP食の人口甘味料が使われている事が多いです。塩抜きがされている数の子に醤油と鰹節をまぶして食べると低FODMAP食として召し上がることが出来ます。
栗きんとん
さつまいもや栗は食物繊維が多く含まれているので、IBDの方は少量に控えましょう。また栗は茹でて柔らかくしてすり潰すと食べやすいと思います。
低FODMAP食をされている方は栗は低FODMAP食です。さつまいもは75g程度までは低FODMAP食の食品です。さつまいもの量に上限があるため食べ過ぎないようにしましょう。市販の商品は甘味料に何が使われているか確認が必要です。
黒豆
IBDの方は皮が気になる方は控えるか、裏ごしして皮を取り除くと安心です。黒豆にはたんぱく質の他に、アントシアニン(ポリフェノールの一種)やカルシウム、鉄分、大豆イソフラボン、食物繊維などが含まれています。体調が良いときには少量を皮ごといただきたいですね。
低FODMAP食をされている方は黒豆は試験結果が出ていませんが、大豆など豆類に制限があることから食べられる場合は少量程度に控えた方がいいです。
黒豆など豆類を食べるとお腹が張りやすい方も少量に控えましょう。
お雑煮
IBDの方は野菜は細かく刻んで長めに茹でて柔らかくすると安心です。三つ葉、ゆず、しいたけは控えた方が良いかもしれません。お餅もやわらかくするとより食べやすくなります。(地域やご家庭によって具材が異なると思いますので、体調が悪いときでも食べられる食材を中心に召し上がってください)
ー グッテレシピから ー
まとめ
年末年始は普段のペースや食事と異なる事が多くなり、どうしても食事のパターンが乱れてしまいやすいです。
食べるのに不安と感じる食材は少量にとどめると体調管理がしやすいかと思います。普段食べ慣れていない食べ物は楽しむ程度に少しずつ味わい、楽しい素敵な年始をお過ごしくださいね。
▼ 昨年度のお正月記事はこちら ▼
▼「年末年始の食べ過ぎを防ぐ工夫」についてはこちら ▼
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士
管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。
参考文献
- 潰瘍性大腸炎とクローン病の栄養管理 講談社
- 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
- Monash University FODMAP Diet App