低脂質で栄養もキープ、便利な電子レンジ活用法 潰瘍性大腸炎/クローン病、過敏性腸症候群向け

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:福多 小夏(管理栄養士)

潰瘍性大腸炎/クローン病(IBD)患者さんや過敏性腸症候群(IBS)患者さんの中には、体調が悪い時などに脂質を控えたい方も多いと思います。脂質を控えた料理を作る際に便利な選択肢の一つが電子レンジを活用した調理です。さらに電子レンジは食材の栄養素を保つことができる、体調が悪い時に短い時間で調理を行うことができるといったメリットもあります。

今回の記事では、まず初めに電子レンジの仕組みを紹介した上で、電子レンジの魅力や電子レンジの活用方法を紹介していきます。

電子レンジとは

電子レンジは電磁波の力で、食品内部の水分を細かく振動させます。そのときに生じる摩擦熱によって、食品全体を温めているのです。したがって、水分をほとんど含まない食品は電子レンジで温めることはできません。

管理栄養士
なっちゃん

電子レンジには2種類あるのをご存知ですか?

  • ターンテーブルがあるタイプ(ターンテーブル式)
    実は電磁波は一方向にしか放射することができません。ターンテーブルが回ることによって、食品を全体的にムラなく均一に温めることができるのです。お掃除は手間ですが、リーズナブルな価格で手に入りやすいのが魅力です。
  • ターンテーブルがないタイプ(フラットテーブル式)
    電磁波をいろいろな方向に反射させているため、ターンテーブルがなくても全体的に温めることが可能になっているのです。ターンテーブルがない分、大きめのお皿を入れることができることと、お掃除が楽なことで人気だそうです。その分、お値段はターンテーブル式よりも高価な傾向があるとか。。
カイ君
潰瘍性大腸炎

僕が使っているのはターンテーブル式ですね。
大きいお皿を入れると車内の壁にぶつかって回っていない時もあったんですが、それってちゃんと温まってなかったんですね(^^;)

管理栄養士
なっちゃん

そうですね。ターンテーブルが回るのにも意味があるので、お皿の大きさも気をつけて下さいね(^^)

また、このどちらかの種類によって、庫内での食材を置く場所が違います。

  • ターンテーブルがあるタイプ(ターンテーブル式)
    中央を避けて、ターンテーブルの縁に置きます。中央は電磁波が一番効きづらい場所のため、複数ある場合はドーナツ状に置くと良いそうです。
  • ターンテーブルがないタイプ(フラットテーブル式)
    庫内の中央に置きます。底部分から電磁波が出て、センサーによって加熱のムラを防ぐように設定されているそうです。

使い方についてはお使いの電子レンジの取扱説明書をよくご覧ください。

IBD、IBS患者さんにとっての電子レンジの魅力

油を減らして調理ができる

電子レンジを使うと少量の油で調理を行うことができるので、脂質を抑えることができます。
例えば、フライパンで油を引かずに薄焼き卵を作ることは難しいですが、電子レンジでは油を使用せずに薄焼き卵を作ることができます。電子レンジを使った薄焼き卵レシピを後ほど紹介します。

唐揚げは鶏肉に少量のマヨネーズをもみ込む、または少量の油(風味付け程度に)を回しかけて電子レンジで加熱することで揚げずに『唐揚げ』ができちゃいますよ!

食材の栄養素を逃さない

鍋で茹でるとゆで汁の中に水に溶けやすい水溶性ビタミンが溶けて流れ出てしまうことがあります。
一方、電子レンジでは食材に含まれる水分のみで加熱を行うことが可能であり、食材に含まれる水分や水溶性ビタミンが外に流れ出ることがありません!

調理時間が短くてすむ

IBDやIBSで体調が悪い時は調理時間は極力短くしたいですよね。そのような時に電子レンジば便利です。特に加熱調理は短くできます
例えば、ブロッコリーを小鍋で茹でる場合は鍋に水を入れて火にかけ、沸騰してから約2~3分茹でてザルで水を切ります。おそらくここまでで5分はかかってしまうのですが、電子レンジだと2分ほどでできてしまいます。

洗い物を減らせる

体調が悪い時には同時に洗い物も減らしたいですよね。電子レンジは、電子レンジ対応の耐熱皿や容器で調理できることから、必要な器具(鍋、水切り用のザルなど)が少なく済み、洗い物の負担を減らせます!洗い物は包丁とまな板だけ、なんてことも可能に(*^-^*)

カイ君
潰瘍性大腸炎

体調が悪い時に特に電子レンジは便利ですね✨

電子レンジ調理でのラップの役割と使い方

加熱すると水分は水蒸気となって食品の外へと放出されやすくなります。

ラップにはこの水分を閉じ込めておく効果があります。水蒸気とともに熱を逃がさない効果もありますので、中まで火を通したいときもラップが必要となります。

また、加熱後しばらくラップをしたままにしておくと、予熱で蒸らすこともできます。

よって、

ラップが必要な時

水分を逃がさずにしっとりさせたい時はラップをかけましょう。
例えば、冷凍したご飯、ゆで野菜、蒸し物、煮魚、カレーやシチューなどです。

管理栄養士
なっちゃん

そして、

ラップはふんわりかけるのがポイントです。

ピタっとかけると加熱中にラップが破裂する可能性があります。

ラップが不要な時

水分を飛ばしてパリっとさせたい時はラップは不要です。
具体的には焼き魚、炒めもの、焼きそばなどです。また、スープや味噌汁など水分が多い料理にラップをするとあふれ出る可能性があるので、ラップの使用は避けましょう。

カイ君
潰瘍性大腸炎

電子レンジを使う時は全てにラップが必要なのかと思っていました。不要のものもあるんですね。

役割を知ると使い方もわかりやすいです!

野菜を電子レンジで調理してみよう!

管理栄養士
なっちゃん

野菜をゆでる代わりにレンジでチン!

慣れるととっても簡単で時短になりますよ♪
我が家はブロッコリーやもやし、じゃがいもなどを電子レンジで調理してます。

ブロッコリー

子房に分けて洗った後、ラップで包みお皿に乗せずに直接電子レンジへ。量にもよりますが、約10房なら600Wで1分30秒くらい。軸の部分を見て色が鮮やかになり透き通っている感じ、もしくは押してみて硬くなければOK。茹でるよりも早く加熱できますし、お鍋を洗う必要もないので洗い物も減らせます。ブロッコリーの味も栄養がギュッと詰まったような濃い味がします。

管理栄養士
なっちゃん

我が家では、朝ごはんやお弁当の用意、夕食時にエビなどと一緒に炒める前に活用してます♪

もやし

洗った後、大きめの耐熱深皿に入れてふんわりラップをして600wで2分40秒(1袋分)加熱します。
水でサッと冷やし手でギュッと水気を絞ります。もやしのシャキシャキ感が残っていて、ナムルにも最適です!

玉ねぎ

  • ハンバーグに入れる場合
    みじん切りにした玉ねぎを耐熱皿に入れ、ふんわりとラップをかけて600wで1分30秒加熱します。ラップを外して粗熱を取ってから、水分が入らないように気を付けながら肉だねへ投入します。
  • カレーに入れる場合
    薄切りにした玉ねぎを耐熱皿に入れ、ラップをせずに600wで3分加熱して水分をとばします。
カイ君
潰瘍性大腸炎

洗い物も減り、炒める時間も短縮できるので時短になりますね!

じゃがいも

水で洗ったじゃがいもをぬれたままラップで包んでお皿に乗せずに600wで3分程加熱し、上下をひっくり返してさらに3分加熱します。
新じゃがなら皮付きのまま、新じゃがでなければ皮をむいて付けあわせに。

管理栄養士
なっちゃん

フォークやマッシャーで潰してコロッケやポテトサラダにしても美味しいですよ♪

電子レンジ調理に工夫が必要な食品

ご存知の方も多いと思いますが、卵をそのまま電子レンジで加熱することはNGです。生卵もゆでたまごも破裂してしまうことがあるためです。
生卵を電子レンジで加熱する際は、黄身の部分を楊枝などで数か所穴を開けてから加熱しましょう。温泉卵を作るときにはこの方法で!

Cocoaさんのレシピ「温玉のせ雑炊

また、電子レンジを使って一工夫することで油を使わずに薄焼き卵を作ることができます。

気まぐれ備忘録さんのレシピ「デミグラスオムライス

ウインナーやたらこ、トマトなど

薄い皮や膜がついている食品はそれらが破裂する可能性があるため、あらかじめ切り込みを入れておくと防ぐことができます。

にんにく、さつまいもなど

水分量の少ない食材は焦げやすく発火する危険性があるため、一度水にくぐらせてからラップをして水分が逃げないようにしましょう。同じく、ドライフルーツなどの水分量がほとんどない乾物は発火の危険性があるため避けましょう。

管理栄養士
なっちゃん

電子レンジは身近で便利な調理家電!ぜひ試してみてください。

カイ君
潰瘍性大腸炎

「料理を温める時」だけにしか今まで使ってこなかったので、まずは野菜を電子レンジで調理試してみます(^^)

また、グッテレシピでは#電子レンジを活用したレシピがまだまだあります。ぜひ一緒にチェックしてみてください!

電子レンジレシピのご紹介

めいさんレシピ「蒸しなすのお浸し

皮をむいたなすを濡れたままラップで包んでレンチン。白だしに浸けて味を含ませたら、ほっとする味の完成☆

abqさんレシピ「にんじんのクミンサラダ

人参をオリーブオイルで和えてからふんわりラップをして、レンチン。クミンシードでエスニックな気分☆

はゆこさんレシピ「レンジで出来るレンコンのドライカレー

ドライカレーだって電子レンジだけで作れるんです。時間のないときにおススメです☆

参考文献:食品成分表8訂

監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

福多 小夏
管理栄養士  

元病院管理栄養士。急性期病院に勤務し入院患者さんの栄養管理や主に生活習慣病患者さんへの栄養指導に従事し1人体制の栄養科で病院内を毎日駆け回る。子供の妊娠を経て夫の海外赴任のタイミングで病院を退職し子育てを経てグッテでの勤務を開始。親しみやすく、寄り添えるような管理栄養士になれるよう努めていきたいです。中学生と小学生の子どもを持ち、フレンチブルドッグをこよなく愛する2児の母です。