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潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)と働くこと~就労に伴う不安との向き合い方

執筆者:大谷 翔(国家資格キャリアコンサルタント/両立支援コーディネータ― )

潰瘍性大腸炎やクローン病(IBD)患者さんは「この先も今のように働き続けられるだろうか」「治療と仕事を両立できるのだろうか」などの不安を抱えている方も多いと思います。こうした悩みは、決して特別なものではありません。

このコラムでは、2025年12月6日に開催された、IBDとともに働き続けるコツ①「働く不安を自信に変える、考え方の工夫」から、不安を抱えながらでも働き続けるための“心の持ち方”や“考え方の工夫”について、一緒に整理していきます。

不安になるのは「能力不足だから」ではない

IBD患者さんが仕事について感じる不安には、共通するものがあります。

定期的な通院が必要なこと

突然体調が変わる可能性があること

職場に病気のことをどこまで伝えるべきか悩むこと

こうした要素が重なると、「周囲に迷惑をかけてしまうのではないか」「自分は十分に役割を果たせていないのではないか」という自責の気持ちが強くなる場合があります。

しかし、これらの不安は、本人の能力不足から生じているわけではないという点に注目が必要です。IBDは体調の波に個人差があり、職場環境にも大いに影響される可能性があります。また、外から見えにくい病気であるため、社会や職場の理解が十分に期待できないこともあり、結果として不安が増幅されてしまうことにもつながります。

そのため、これらの不安や体調不良は個人の能力の欠如ではなく、病気の特徴と、制度や環境との相互作用によるものと考えてよいでしょう。

「自己効力感」が揺らぎやすい理由

「自分にはできる!」という自信の感覚は、「自己効力感」(Bandura,1977)と呼ばれています。この「自己効力感」=「自分にはできる!」という感覚を構成する情報源を大まかにまとめると、

① 自分の成功体験
② 他者の成功体験の観察
③ 自分に対する声がけ
④ 自分の心や身体の状態

の4つに区分されますが、IBD患者さんは、これらの情報源において自己効力感が揺らぎやすい状況にあります。

例えば、休暇の相談がうまくいかなかった経験(①)や、両立に成功している身近な事例を知らないこと(②)、体調悪化による気持ちの落ち込みなどが重なる(④)と、「自分には無理かもしれない…」といったように、自信が削がれ、不安が高まってしまいます。さらに、病気に対する社会的な偏見や、「迷惑をかけてはいけない」という思い込み等が重なることで、自分自身を過度に責めたり、制限してしまうことも少なくありません。

不安が強いとき、無意識のうちに「できないこと」や「できていないこと」ばかりに目を向けてしまいませんか?

体調を完璧に管理できないこと、以前と同じように働けないこと、周囲に気を遣わせていると感じること。こうした考えが頭を巡り続ける状態は、決して珍しくありません。

しかし、少し立ち止まって振り返ってみると、実は「できること」「できていること」もたくさんあるはずです。通院を続けながら仕事をしていること、体調に合わせて工夫しながら働いていること、これまで何度も困難を乗り越えてきた経験があること。それらはすべて、ご自身が積み重ねてきた宝物のような成功体験なのです。

患者さんの体験談を読んだり、ピアサポートに参加したりすることで、同じような立場の人が困難をどう乗り越えているのかを知ることができます。そうした姿を見ることで、「自分にもできるかもしれない」という前向きな気持ちを育てることができます。

また、信頼できる人から励ましの言葉をもらうことで、気持ちが少し前向きになることもあります。どうしても前向きになれないときは、無理に頑張ろうとせず、そばで話を聞いてくれる人に、胸につかえている思いを打ち明けるだけでも、気持ちが整理されていきます。

これら4つの情報源、①自分の成功体験、②他者の成功体験の観察、③自分に対する声がけ、④自分の心や身体の状態、を整理して強化する(高めていく)ことによって、不安を自信に変えていくことに繋がっていきます。

一人で抱えず、「伴走者」と共に歩む

IBDは、完治を目指す病気というよりも、長期にわたり、うまく付き合いながらコントロールすることが必要です。すべてを一人で解決しようとせず、主治医や医療スタッフ、職場の理解者、キャリアの専門家、同じ病気を持つ仲間など、一緒に考えてくれる人(伴走者)の存在は大きな支えになります。

自分の人生やキャリアのハンドルは自分が握りつつ、伴走者に定期的に点検を手伝ってもらう。その関係性が、無理のない働き方を続ける土台となります。

おわりに

大切なのは、「できないこと」を数え続けることではありません。「できること」「できていること」に目を向け、小さな前進を認めながら、自分を信じる感覚を少しずつ大きくしていくことが大切です。キャリアのハンドルを自分で持ち、あなたのペースで、あなたらしい働き方を探す旅に、ここから出発してください。

執筆者

大谷 翔
国家資格キャリアコンサルタント/両立支援コーディネーター
共愛学園前橋国際大学 入試広報・就職部 課長補佐、キャリア教育グループ長


大学にてキャリア教育科目の講師および、就職相談、産官学連携などに携わってきました。

参考文献:

・Bandura, A. (1977). 「Self-efficacy:Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84, 191-215.

・アルバート・バンデューラ. (1997). 「激動社会の中の自己効力」
・障害者職業総合センター. (2024).「難病患者の就労困難性に関する調査研究」
 ・NPO法人IBDネットワーク. (2024). 「わたしのトリセツ」

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