〜栄養、消化に良い食べ方、気をつけること、おすすめレシピ〜
執筆者:福多 小夏(管理栄養士)
今回は潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)患者さんや過敏性腸症候群(IBS)患者さんにとって大切な栄養源の一つである卵についてお話ししたいと思います。卵に含まれる栄養素や消化管への負担が少ない卵料理、卵を使用する上での留意点、レシピ等について網羅的に記載していますので、参考にしていただけると嬉しいです。
卵に含まれる栄養素
卵はオムレツやオムライスなどの主菜から茶碗蒸しなどの副菜まで幅広く重宝します。卵焼きやゆで卵はお弁当に彩りを添えてくれます。目玉焼きやスクランブルエッグは朝食の定番メニューですね。溶き卵を雑炊やスープに入れたり、サラダや丼物に温泉卵をのせると特別感が増します。ハンバーグを作るときのつなぎやお菓子作りにも大活躍します。
卵はお手頃で簡単レシピにも使い易くて、料理が苦手な僕もとても重宝しています!
そうですね。卵は使い勝手もよく、さらに和風・洋風・中華どのジャンルにもなくてはならない食材なんです♪
そんな冷蔵庫にあると助かる卵ですが、
実は卵の栄養価は高く、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルが含まれています。特に脂溶性ビタミンのビタミンA、D、Eと水溶性ビタミンのビタミンB類が豊富です。
早速、卵の栄養価について詳しく見ていきましょう。
※表のTr(微量、トレース)は最小記載量の1/10以上含まれているが5/10未満であること
たんぱく質は卵黄と卵白との両方に含まれていますが、脂質は卵黄にしか含まれていないことが分かります。
この卵黄に含まれる脂質の一部は主に植物油やナッツ類に含まれる脂質(不飽和脂肪酸)であり、主にお肉に多く含まれる脂質(飽和脂肪酸)の割合は比較的少ないそうです。体調が良いときには安心して食べられます。一方体調が悪いときには、低脂質食が推奨されているため摂取量を少なくするなど、ご自身の体調に合わせて調整してください。
脂質についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご一読ください。
卵白は卵黄より高たんぱくなのに低脂質・低カロリーなんですね!
そうなんです!
ただ、卵白にはビタミンやミネラルはほとんど含まれていません。なのでビタミンやミネラルを補給したい場合は全卵や卵黄を食べることをおススメします。
また、卵は炭水化物が少ないことや食物繊維が含まれていないことが分かりました。
なっちゃん、炒めたり、蒸したりと調理方法を変えると栄養価も変わりますか?
目玉焼きやいり卵にすると脂質量が増えますが、この脂質は油を使って調理した場合だと考えられますので、ノンオイルで調理すれば脂質量は変わりません。
その他の栄養素についても調理前と調理後で極端な大きな差は見られないことが分かりました。
卵のコレステロールについて
卵というとコレステロールを気にされる方がいるかもしれません。卵1個(55g)に約204㎎のコレステロールが含まれています。
以前のガイドラインでは一般的な成人の1日のコレステロール摂取量は300㎎未満が推奨されていました。しかし、最近の研究によって、食事によるコレステロールの摂取は血液中の総コレステロールや悪玉と言われるLDLコレステロールにほとんど影響しないことが判明しました。体内のコレステロールのほとんどは食事によるものではなく、肝臓で生成されるものだからだそうです。そのため、コレステロール摂取量の基準値は設定されていませんが、日本人の食事摂取基準(2020年版)では「脂質異常症の重症化予防の目的として、コレステロールを200㎎未満/日に留めることが望ましい」とされています。コレステロール値が心配な方は主治医にご相談ください。
1日に何個まで食べて大丈夫なのでしょうか?
依然として研究途中ではありますが、ハーバード大学によると「平均的に健康な人で週に7個まで食べても害はない」と言われています。
平均して1日に1個とし、1日に2個食べた翌日は卵の摂取を控えるなど、バランスよく食べるのが良さそうですね。
参照:How many eggs can I safely eat? - Harvard Health
参照:日本人の食事摂取基準
消化に良い卵の調理方法は?
ゆで卵を作る際は半熟状態が消化に良いと言われています。火を通しすぎるとたんぱく質が凝固して硬くなり、消化に時間がかかるそうです。
目玉焼きやオムレツ、卵焼きは油を使わずに調理すると、より消化管への負担は少なくなります。目玉焼きを作るときはゆで卵と同様に半熟に仕上げると良さそうですね。
また茶碗蒸しを作るときには、消化管に負担がかかる食材(きのこ類やエビなど)は入れないようにしましょう。
生卵、半熟卵を食べるときの留意点
生卵や火をあまり通していない半熟卵は食中毒のリスクがあるため、注意が必要です。
卵にはサルモネラ菌という細菌が存在している場合があり、感染すると、下痢、腹痛、嘔吐及び発熱などの症状が現れることがあります。
サルモネラ属菌や他の食中毒菌の感染対策には、具材の中心温度が75℃1分以上の加熱をするようにします。
もし、卵を生や半熟状態で食べる場合は、殻が割れているものやひび割れているものは使わず、食べる直前に殻を割るようにしましょう。自家製のマヨネーズを召し上がる場合には保存はせずその都度食べきるようにします。
また、高齢者、2歳以下の乳幼児、妊娠中の女性、免疫機能が低下している人など、抵抗力の弱い人は、生卵や半熟状態を控え、できる限り十分加熱した卵料理を食べるようにしてください。
参照:たべもの安全情報館|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 (tokyo.lg.jp)
栄養たっぷりで魅力がいっぱいの卵料理をぜひ楽しんでいただけたらと思います♪
グッテレシピでは「主菜/卵」からもレシピが探せます♪ぜひチェックしてみてください(^^)
卵を使ったレシピのご紹介
リノさんレシピ「温玉乗せ☆やわらかレタスのサラダ」
うみ./クローン病さんレシピ「しらす入り卵トースト」
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
福多 小夏
管理栄養士
元病院管理栄養士。急性期病院に勤務し入院患者さんの栄養管理や主に生活習慣病患者さんへの栄養指導に従事し1人体制の栄養科で病院内を毎日駆け回る。子供の妊娠を経て夫の海外赴任のタイミングで病院を退職し子育てを経てグッテでの勤務を開始。親しみやすく、寄り添えるような管理栄養士になれるよう努めていきたいです。中学生と小学生の子どもを持ち、フレンチブルドッグをこよなく愛する2児の母です。