低FODMAP食の進め方~過敏性腸症候群(IBS)の方向けの食事療法の紹介~

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)

管理栄養士のKaoriです。
近年、過敏性腸症候群(IBS)の食事療法の1つである「低FODMAP(フォドマップ)食」の認知度が高まり、多くのウェブサイトで取り上げられるようになりました。
しかしながら、実際に「低FODMAP食」を実践する方法については情報がまだ少なく感じています。
今回のコラムでは低FODMAP食の詳しい内容、実際行う際の注意点や実践方法について知りたい!という方向けに、数回に分けてシリーズで、「低FODMAP食」の実践方法について詳しくお伝えしていきます。
今回は低FODMAP食の3つのステップの1番目「制限期間」についてです。

FODMAP(フォドマップ)とは?

まずはFODMAPとは何かについてご説明をします。
FODMAPとは、以下の頭文字を組み合わせた言葉になります。

Fermentable:発酵性の
Oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖) 
Disaccharides:二糖類(ラクトース)
Monosaccharides:単糖類(フルクトース) 
And
Polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、など)

FODMAP(フォドマップ)は、小腸で分解・吸収されにくい糖のグループです。このグループは元々は腸内細菌のエサとなるものですが、一部の方には、FODMAPは小腸に到達すると水を引きつけた水分と、大腸内では腸内細菌によって発酵されたガスにより腸壁が伸びて膨張します。
腸壁の伸張による痛みや不快感がIBSの症状に関わると考えられています。

管理栄養士
かおりさん

低FODMAP食について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

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低FODMAP食 食事療法の目的と進め方

低FODMAP食の目的は、
消化器症状を引き起こす原因となる食品やFODMAPを特定し、原因となる食品の食べる量を調整しながらバランスの良い食事を摂取することが低FODMAP食のゴールとなります。

低FODMAP食 食事療法は以下の3ステップに分かれた食事療法です。

1. 制限期間

  • 高FODMAP食品を低FODMAP食品に置き換えて、低FODMAP食を実践する。
  • 目的は症状を落ち着かせる事です。

2. 再導入期間

  • 低FODMAP食の継続しながら、個々のFODMAPでの症状を特定するためにフードチャレンジを行う。
  • 目的は、FODMAPが体に合う/合わないを判断することです。

3. パーソナライズ期(個別化された食事の継続)

  • 症状が出るFODMAPのみ制限した食事を続けます。
  • 十分な症状緩和が得られるレベルまで制限します。
  • 目的は、個人の体調に合わせたFODMAP食を長期的に確立することです。

今回はその中で1.制限期間について詳しくお伝えします。

制限期間とは?

FODMAP制限期間では、FODMAPを多く含む食品(高FODMAP)をFODMAPが少ない(低FODMAP)の食品に置き換え、極力摂取しないようにし、制限期間2~6週間の間に症状が改善するかを確認します。
長期間に渡って制限期間を続けることで食事バランスが崩れ、栄養不足に陥らないように気をつけてください。

FODMAPが原因で消化器症状が起きている場合は、この制限期間でお腹の症状の改善がみられます。1週間程度で症状の改善を実感できる患者さんもいれば、2-3週間後に症状の改善を実感し始める患者さんもおり、症状の変化が出るタイミングは人によって異なります。

FODMAPが高い/低い リスト

制限期間中は下記の表*1を参考に普段の食事の中で高FODMAP(FODMAPが高い)食品を、低FODMAP(FODMAPが低い)食品に置き換えて食事します。

*1)Monash University FODMAP dietアプリをもとに作成 2024.4.8

穀物類・大豆類・ナッツ類・乳製品
肉類・魚介類・卵

肉類・魚介類・卵は基本的にFODMAPが低い食品ですが、にんにくや玉ねぎ、大豆など高FODMAPのものが使われている肉加工品、水産加工品はFODMAPが高くなる可能性があり注意が必要です。

野菜類
果物
調味料、甘味料
飲み物

まとめ

FODMAPを制限しながら、バランスの良い食事をとるのはとても難しいです。制限期間を長期間続けると栄養バランスが崩れることもあるので注意しましょう。
そのため、低FODMAP食では、1段階目の制限期間をずっと継続するのではなく、症状改善の効果があった場合は2.再導入期間、3.維持期間の3段階まで進みましょう。

また、低FODMAP食は全てのIBS患者の方に効果的な方法ではありません。
4~6週間程度続けて効果が感じられない場合は低FODMAP食を中止して別の対策を検討することも一案です。

次の機会では再導入期間についてご紹介したいと思います。

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監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。

参考文献
  1. https://www.monashfodmap.com/