執筆者:井本 かおり(管理栄養士)
管理栄養士のKaoriです。
2024年4月に低FODMAP食の進め方~過敏性腸症候群(IBS)の方向けの食事療法の紹介~ では、
- 低FODMAP食には3つのステップがあること
- 1番目のステップ「制限期間」について
ご説明をしました。
今回のコラムでは、2番目のステップ「 再導入期間」について説明します。
FODMAP(フォドマップ)とは?
まずはFODMAPとは何かについてご説明をします。
FODMAPとは、以下の頭文字を組み合わせた言葉になります。
Fermentable:発酵性の
Oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
Disaccharides:二糖類(ラクトース)
Monosaccharides:単糖類(フルクトース)
And
Polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、など)
FODMAP(フォドマップ)は、小腸で分解・吸収されにくい糖のグループです。このグループは元々は腸内細菌のエサとなるものですが、一部の方には、FODMAPは小腸に到達すると水を引きつけた水分と、大腸内では腸内細菌によって発酵されたガスにより腸壁が伸びて膨張します。
腸壁の伸張による痛みや不快感がIBSの症状に関わると考えられています。
低FODMAP食について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
FODMAP再導入期間とは?
この「再導入期間」は、FODMAP(フルクタン、ガラクトオリゴ糖、ラクトース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール)の中のどの種類が原因でお腹に影響が出るかを確認することが目的です。
再導入期に入る目安は「Step1.制限期間」を3〜6週間ほど続け、症状が改善されることを確認してから、再導入期間に入ります。
再導入期間でのテスト食品の選び方
「Step1.制限期間」同様にFODMAPを控えた食事を続けながら、1種類を少量ずつFODMAPを食べてお腹の調子への影響を確認していきます。
どのFODMAPが消化器症状に影響を与えるかは個人差があります。
具体的には、下記の図を参考にFODMAPグループに含まれる食材から食品を1つ選び順番に試していきます。
フルクタンについては、ニンニクと野菜では症状が出る量が大きく違うことや、同じフルクタンでもニンニクには反応するが、他のフルクタンには反応しないという人もいるため、1 種類だけでなく4つに分けて試す方が良いとされています。
再導入期間のテスト方法
- テスト量はMonash大学のFODMAPアプリを参考にする事をお勧めします。
- それぞれのグループ別によく食べる食品から1つ選び確かめていきます。
- 1 つの FODMAP グループから食品を1つ選び 3日間に分けて徐々に食べる量を増やしていき、症状の反応を確認します。
例えば、ラクトースが含まれるグループを試す場合、
牛乳:1日目に60ml→2日目に120ml→3日目に250mlと試していきます。 - 食事内容、体調、便の様子を記録します。
- 3日間食品を試したあとは、2〜3 日「制限期間」を設けてから、別グループの食品を試します。
- テストの結果、消化器症状が出るまでの量は許容できる、消化器症状が出ない場合は試した量までは許容できることが分かります。
- 再導入期間全体が終わるまでには順調に進む場合で約 6〜 8 週間かかります。
再導入期を進めるPOINT
- 「Step1.制限期間」を3〜6週間ほど続け、症状が改善されることを確認してから、再導入期間に入ります。
- 再導入期間の間は、試す食材以外は「1.制限期間」を継続します。
- 毎日ほぼ同じ時間に、一度に1つの食品を試します。
- 同じ食品を3日間試します。
- 3日間の間で消化器症状が出た場合その時点で中止します。
- 3日間試した後、または症状が落ち着くまで 2〜 3 日の休憩を取ります。この間、「Step1.制限期間」に戻ります。
まとめ
今回は低FODMAP食のStrp2.再導入期間について説明しました。
再導入期間は症状が出る可能性がある食品を試すため、心身に負担がかかる作業になると思います。
しかし、再導入期間で食べられる食品が分かることで、食の選択肢が増える事や、長期的にFODMAPを制限することは腸内細菌の餌が減ることや、食事バランスが崩れやすい事から必要な作業です。次回は、パーソナライズ期(個別化された食事の継続)についてご紹介したいと思います。
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監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士
管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。
参照:
Monash University FODMAP Diet app
https://www.monashfodmap.com/blog/practical-tips-fodmap-reintroduction/