執筆者:福多 小夏(管理栄養士)
よく耳にする「うま味」。知っているようで、実はあまりよく知らない方も多いのではないでしょうか。うま味の世界を知ると料理が楽しくなるかもしれません。
今回はうま味と出汁の取り方について、お話ししたいと思います。
うま味成分について
基本味と呼ばれる味は主に5つあり、甘味、酸味、苦味、塩味、うま味です。「うま味」は味を構成する基本味のひとつを指します。味には他に、辛味や渋味などがあります。
「うま味は他の基本味に比べて味の持続性が高いという特徴があります」*1
うま味は口の中に余韻として残りやすいということです。
食後の満足感を得るためにも、うま味が一役買っているんですね。
「うま味」の成分は主に3つあります。
- グルタミン酸
「1908年、科学者池田菊苗は昆布出汁の味を担う成分がグルタミン酸であることを発見」しました。グルタミン酸はアミノ酸の一種で、昆布や野菜などの植物性食品やチーズなどの発酵食品、みそや醤油などの発酵調味料に多く含まれています。 - イノシン酸
核酸の一種で、肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。 - グアニル酸
グアニル酸も核酸の一種で、干ししいたけや乾燥ボルチーニに多く含まれています。
<うま味成分と多く含まれる食品例>*2
<うま味の相乗効果>
動物性に含まれるうま味成分のイノシン酸と、植物性に含まれるうま味成分のグルタミン酸やグアニル酸が組み合わさると「うま味の相乗効果」と呼ばれ、うま味を強く感じることができると言われています。*3
その効果は単体で使用することに比べて約7〜8倍と言われています。
おいしい汁物をつくるポイントはグッテコラム 「グッテレシピ閲覧ランキング スープ、汁物編」をご参照ください。
https://learn.goodtecommunity.com/special_list/75/
<脂分と出汁の関係>
農林水産省の記事に潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)患者さんにとって、嬉しい記事が載っていました。
「脂分を摂取すると脳内に快感物質 が出て、『おいしかった』という記憶が残ることがわかっています 。鰹出汁とでんぷんを組み合わせた際にも同じ記憶が残ることもわかっており、一食の献立の中にうま味成分を適切に使うことで 脂分を抑えても十分な満足感を引き 出すことは可能かもしれません」*4
おいしい出汁の取り方
料理人の数だけ出汁の取り方があると言われますが、
ここでは一般的な基本の出汁の取り方を紹介します。
<昆布とかつお出汁の取り方>
【材料】
- 昆布 10g
- かつお節 10g
- 水 1000ml
だしの素材の分量は、水の分量に対して1%が基本の分量です。
【取り方】
- 水で濡らして固く絞った布巾やキッチンペーパーなどで、昆布の表面をやさしく拭く。昆布の表面に見られる白い粉は昆布のうま味成分なので、取り除かないように注意します。
- 鍋に水と昆布を入れ、30分以上おく。夏場は冷蔵庫に入れておく。
- 鍋を弱めの中火にかけ、ゆっくりと沸騰直前まで加熱する。
- 火を止め、昆布を取り出す。
- 火を止めたまま、かつお節を入れ、再度中火にかける。
- アクが出てきたらアクを取り、沸騰したら火を止める。
- かつお節が沈み始めたら、ボウルとざるを重ね合わせ、さらにキッチンペーパーや布などを乗せてかつお節をこす。
- 昆布とかつお出汁の完成
もっと手軽にだしを楽しみたい方に
<市販のだしパックで出汁を取る方法>
- 鍋に水を入れ、水の中でだしパックを菜箸などで揺らして、だし色を出す。(約20秒程)
- 沸騰するまで強火にかける。
- 沸騰したら中火にして3分程煮だす。
- パックは絞らずに取り出す。そのまましばらく放置してもOK。
市販のだしパックを使わない場合は、空のだしパックに分量のお好みのだしの素材を入れて同じ方法で煮だすことができます。
<水だし昆布だしの取り方>
- 密閉容器に分量の昆布と水を入れ、蓋をして一晩冷蔵庫に入れておくだけで完成
注意点過敏性腸症候群(IBS)で、低FODMAP(フォドマップ)食を実践中の方はかつおやいりこだしなど低FODMAPのものを選びましょう。
おすすめのレシピ~グッテレシピから~
昆布とかつおで出汁を取り、干し椎茸も具材として含まれています。だしのおいしさを実感できる一品です。
鶏肉に含まれるイノシン酸とトマトに含まれるグルタミン酸のうま味の相乗効果を感じられる一品です。
まとめ
- うま味は基本味のひとつである
- 主なうま味成分はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の3つである
- 動物性のうま味と植物性のうま味を組み合わせると「うま味の相乗効果」を得られる
うま味を意識して料理を作ると、料理の腕が上がるかもしれませんね。
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参照
*1、*4 引用元:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-42.pdf
*2 独立行政法人 農畜産業振興機構(資料:日本うま味調味料協会)
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002153.html
*3 国立がん研究センター 東病院
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/CHEER/point/030/index.html
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
福多 小夏
管理栄養士
元病院管理栄養士。急性期病院に勤務し入院患者さんの栄養管理や主に生活習慣病患者さんへの栄養指導に従事し1人体制の栄養科で病院内を毎日駆け回る。子供の妊娠を経て夫の海外赴任のタイミングで病院を退職し子育てを経てグッテでの勤務を開始。親しみやすく、寄り添えるような管理栄養士になれるよう努めていきたいです。中学生と小学生の子どもを持ち、フレンチブルドッグをこよなく愛する2児の母です。