簡易版の低FODMAP食 (Low FODMAP Gentle/ Simplified Version)のコンセプトと実践方法

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)
執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)

米国登録栄養士の宮﨑です。
今回は低FODMAP食を簡単に実践する方法「簡易版低FODMAP食」を紹介します。海外ではSimplified versionやLow FODMAP Gentleなどと言われています。


低FODMAP食とは?


低FODMAP食は過敏性腸症候群(IBS)の方や潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の寛解期の食事起因の消化器症状に対して広く用いられている食事療法です。
これまでの研究で消化器症状に影響を与えやすい糖鎖の短い炭水化物が特定されてきています。

Fermentable:発酵性の
Oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖) 
Disaccharides:二糖類(ラクトース)
Monosaccharides:単糖類(フルクトース) 
And
Polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、など)

低FODMAP食はこれらのFODMAPが取り除かれた食事になります。詳細は以下のリンクをご参照ください。

https://learn.goodtecommunity.com/special_list/68/

簡易版低FODMAP食が注目される背景

低FODMAP食は欧米の医療機関で広く用いられている食事療法であり、日本でも認知度が上がっています。

一方で低FODMAP食はコンセプトや実施方法を理解するのが非常に複雑な食事療法で、実施期間も最低でも2-3カ月はかかることから敷居が高く、多くの患者さんにとって実践が難しい食事療法であるとも言われています。

そのような中で簡易版の低FODMAP食が注目されており、海外の栄養士向けセミナー等でも提唱されています。

簡易版低FODMAP食の進め方

簡易版の低FODMAP食にも様々なアプローチがありますが、広く行われているのは日々の食事の中でFODMAPが特に多く含まれている食材のみを食事から取り除くという方法です。

簡易版低FODMAP食の基本的な考え方は「特定の食品のみを制限する」ということです。

具体的には以下のような食品のみを取り除きます。

  • FODMAPの含有量が多く消化器症状が出やすいと考えられている食品
  • ご自身の中で食べる頻度や量が多い食品
  • これまでの経験上、その食品を食べると消化器症状につながる食品

以下のような食品に多くFODMAPが含まれることがわかっていますので、制限する食品を選ぶ際の参考にしてみましょう。

FODMAPが多く含まれる食品】

*乳製品の中でチーズは種類によって乳糖の含有量が異なるため記載していません

また、簡易版低FODMAP食においてどの食品が消化器症状の原因となったかを特定するためには、少しずつ食品を取り除いていくことが望ましいです。

例えば、まずにんにくを取り除いてみて効果があるかを確認し、その後別の食品を取り除いてみて、効果があるかを確認するという流れです。

簡易版低FODMAPの留意点

簡易版の低FODMAP食を実践する上で留意すべき点は以下となります。

  • リストにある食品で、よく食べている食品は制限する
  • 食べる量や頻度が少ない食品は摂取してもよい
  • 加工食品は摂取してもよい

繰り返しになりますが、制限する食品を絞り込むのがポイントになりますので、できる食品から手をつけていきましょう。

また低FODMAP食に取り組む上でどのような料理を作ったら良いかイメージできないという方はぜひ下記の低FODMAP食レシピをご参照いただければと思います。

https://goodtecommunity.com/recipe_search/low-fodmap/

まとめ

以上、簡易版の低FODMAP食を紹介しました。簡易版低FODMAP食は今まで低FODMAP食に興味を持ったけれども踏み出せなかった、また低FODMAP食に取り組んだけれども挫折したという方におすすめです。ぜひできるところから取り組んでいきましょう。

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監修者

今井 仁
東海大学健康管理学|消化器内科 講師

消化器専門医。医学博士。2009年に東海大学を卒業し横浜市立市民病院で初期臨床研修と消化器内科医として勤務開始。東海大学にて博士を取得後2017年米国ミシガン大学に留学し腸内細菌の研究に従事。帰国後も継続して腸内細菌の研究、消化器内科の仕事、健診センターの仕事を掛け持ちし日々研鑽を積んでいる。

執筆者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士  

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。