世界IBSデーに合わせたオンラインイベント「低FODMAP(フォドマップ)食の最新動向と実践のヒント」を開催レポート

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)

こんにちは。

管理栄養士のかおりです!

今回のコラム2024.4.19(金)に開催しました世界IBSデーに合わせたイベント「低FODMAP(フォドマップ)食の最新動向と実践のヒント」の中から、「海外における低FODMAP食研究・実践の最新動向」についての内容をレポートします。

管理栄養士
かおりさん

今回のイベントではたくさんの方にご参加いただきありがとうございました。普段たくさんの方とZoomを通してお話する機会がなく、とても緊張しました。
みなさまにうまくお話が伝わりましたでしょうか。

今回のイベントの背景

毎年4月19日は世界IBSデーとして世界各地で様々な啓発活動が行われ、過敏性腸症候群(IBS)患者さんや医療従事者、支援者の方が繋がり、IBSの啓発活動などを目的に実施されています。

IBS患者さんが他の患者さんや社会とのつながりを感じられるとともに、IBSの認知を向上させたいとの思いから、FODUPの共同開発先でもあるSUNAO製薬さんと共催でイベントを開催するに至りました。

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)は、内視鏡などの検査をしても大腸に異常が見つからないのにも関わらず、腹痛を伴う下痢や便秘が繰り返し起こる病気です。成人のおよそ10人に1人が過敏性腸症候群だと言われています。命に関わる病気ではありませんが、お腹の痛み、便秘・下痢、不安などの症状のために日常生活に支障をきたすことが少なくありません。*1。

IBSと認識していない人が多いことに加え、IBSの症状が腹痛や下痢など周りの人に話しにくい症状ということもあり、IBSを抱える方が孤独感を抱えることが多くあると言われています。

過敏性腸症候群(IBS)への食事療法

低FODMAPの食事療法は、食品分類などの分析手法やプロセスが確立されていることに加え、IBSの食事療法として科学的根拠が蓄積され始めている食事療法です。

それ以外にも英国NICEのガイドライン、地中海食、グルテンフリーがIBSの患者さんの食事療法として良いのではないかといった研究が進んでいます。

今回のイベントでは、低FODMAP食をメインにお話をしました。

低FODMAP(フォドマップ)食

低FODMAP食食事療法の進め方について今回のイベントでもお話した内容は過去のコラムでも発信しています。詳しい内容を知りたい方は、合わせてご覧ください。

https://learn.goodtecommunity.com/special_list/02/

<低FODMAP食のIBS・IBDへの効果>

IBSへの効果

複数の研究結果を解析した研究では、科学的エビデンスの質は低いものの低FODMAP食が過敏性腸症候群の消化器症状改善に有効と報告されている*2

52-86%程度の過敏性腸症候群患者さんが低FODMAP食により消化器症状が改善された*3

IBDへの効果

寛解期の炎症性腸疾患患者さんを対象とした臨床試験では、低FODMAP食によって52%の患者さんの消化器症状が改善された*4

複数の研究結果を解析した研究では、寛解期の炎症性腸疾患患者の腹痛や下痢、膨満感などの症状改善に有効であることが報告されている*5

<2つの低FODMAP食事療法>

アメリカなどでは低FODMAP食のプロセスが大変という方向けに、簡易版の低FODMAP食事療法を選ぶ方もいます。

通常版に比べて、科学的根拠が少ないことはあるが、

  • 体重が減ってしまう、貧血があるなど栄養のリスクがある
  • 食事制限に対する精神的なストレスがある

といったことが気になる方は簡易版の方が向いている可能性が高いです。

「低FODMAP(フォドマップ)食の最新動向と実践のヒント」資料より抜粋

簡易版の低FODMAP食とは

消化器症状を引き起こしていると考えられる食品のみを取り除く食事方法です。

日々の食生活の中から、消化器症状につながりやすい高FODMAP食品のみを取り除いて消化器症状に効果があるかを確認する食事療法です。

<簡易版低FODMAP食の基本方針>

強い食事制限をしない。

特定の食品のみを制限する。

  • FODMAPの中で多くの人が症状が出やすいといわれている食品
  • 高FODMAPの食品の中で摂る頻度が多い食品
  • 経験的に消化器症状の原因になっている可能性のある食品
<簡易版低FODMAP食リスト>

具体的に簡易版でどんな食事を制限することが多いか、一般的に消化器症状が出やすいと言われている食品一覧です。

簡易版低FODMAP食 制限する食品リスト一覧

「低FODMAP(フォドマップ)食の最新動向と実践のヒント」資料より抜粋

玉ねぎ、ニンニクは非常に多くの方が消化器症状が出ると言われています。

また、小麦製品は食べる頻度が多く症状が出る可能性がある方は控えます。

それ以外の食品については日々の食生活の中でリストの中にある食品があれば取り除き、消化器症状が出る/出ないを確認し、自分に合う食品を見つけていくようにします。

簡易版低FODMAP食については色々な方法があり、こちらの方法は簡易的低FODAMPの実践方法の1つになります。

その他食事療法の動向

低FODMAP食のエビデンスをベースに簡易的低FODMAP食、低FODMAP食+地中海食など他の食事療法と組み合わせたらどうなるかなどの研究もなされています。

その他今後は消化器症状の原因を取り除きつつも栄養バランスの良い食事療法の研究が期待されています。

<低FODMAP食+地中海食>

近年、低FODMAPと地中海食を組み合わせたらどうだろうという研究や食事指導がされています。

地中海食とは?

地中海食とは、1950年代のイタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理のことで、

  • 乳製品や肉よりも魚を多く使う。
  • オリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う。
  • 動物由来の食品成分は少ない

といった特徴のある食事です。

地中海食については過去のコラムでも発信しています。詳しい内容を知りたい方は合わせてご覧ください。

https://learn.goodtecommunity.com/special_list/30/

まとめ

今回のコラムでは、世界IBSデーに合わせたオンラインイベントの中から、第一部「海外における低FODMAP食研究・実践の最新動向」についてまとめました。

今後も新たな食事療法の動向を色々な形で発信していきたいと思います。

管理栄養士
かおりさん

今回のオンラインイベントでご質問やご感想がございましたら、SNSのDMやメールにてご連絡くださるとうれしいです。今回のイベントが皆さまのお役に立てると幸いです♫

監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。

参考資料

*1 患者さんとご家族のための過敏性腸症候群(IBS)ガイド2023
*2 Dionne J, et al, Am J Gastroenterol 2018
*3 Liu J, et al, Annu Rev Med. 2020
*4 Cox SR, et al. Gastroenterology. 2020
*5 Zhan YL, et al, Clin Nutr. 2018