グッテレシピ

2023年4月23日

過敏性腸症候群(IBS)患者さんの下痢や腹痛、便秘などの消化器症状を引き起こしやすい食品(NG)は?

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)
執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)

4/19はWorld IBS Day (世界IBSデー)です。世界IBSデーは、過敏性腸症候群(IBS)の疾患啓発を目的とした世界的なキャンペーンです。ハーバード大学やミシガン大学など世界中の医療機関やIBSに関連する企業、そして我々グッテも賛同し、疾患啓発活動に関わっています。

4/23にはIBSデーに合わせたイベントも開催します。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000055131.html

IBS患者さんでは食事に関する悩みが多いことがさまざまな研究で示唆されています。では実際にどのような食品で消化器症状を経験しているのでしょうか?

今回は2021年に発表されたオランダのIBS患者さん1601名を対象としたオンライン調査(Cross Sectional Survey)の結果を紹介いたします。


研究の概要

この研究ではRomeIV分類でIBSの診断基準を満たす1601名の患者さんを対象として、これまでの研究をベースに抽出した44の食品に対する症状、IBSに関するQuality of Life (生活の質)、不安、うつについてオンラインで質問を行いました。

またその結果をIBSのサブタイプ(下痢型、便秘型、混合型、未分類)、IBSの重症度で分析を行いました。

結果

詳細結果は以下となります。症状を引き起こす食品が多岐に渡ることが示されています。

食品カテゴリーでは油っぽい食べもの、辛い食べもの、豆類、酒類で多くの患者さんが消化器症状を経験していました。

8つの食事カテゴリーへの反応(参考文献Figure3を一部改変)

さらに食品ごとの反応を見ているとたまねぎ、キャベツ、揚げ物などで多くの患者さんが症状を経験していました。

一方で、IBS患者さん全体で見た時に特定の食品のみではなく、多岐にわたる食品に対してさまざまな患者さんが症状を経験していることもわかりました。

36品目の食品に対する反応(参考文献Figure3を一部改変)

食品に対する症状の違い

上記のNG食品に対する反応は、IBSのサブタイプや重症度ごとで若干の差は見られたものの大きな差は見られませんでした。

他方、食事に対する消化器症状は、より重症度が高いIBS患者さんの中で精神的ストレスが強い方、不安が強い方、QOLが低い方でNG食品に対する症状が強いことが示されました。

以上を踏まえて、IBS患者さんの食事への影響については、下痢型、便秘型などのサブタイプ分類よりもIBSの症状の重症度や不安・精神的ストレスの度合いの方が重要な要素であることが示唆されたと著者は述べています。

終わりに

今回の記事ではオランダで行われた研究をもとに消化器症状を引き起こす食品についてみました。

人によって消化器症状を引き起こす食品が異なること、またIBSの重症度や不安・精神的ストレスがある状態が食事起因の消化器症状に影響を与えていることが示唆されました。

IBS患者さんの食事による消化器症状にはさまざまな要因が影響を与え非常に複雑であることであることがお分かりいただけたかと思います。

食事については主治医や管理栄養士の先生と相談しながら自分に合った食事を模索しましょう。

監修者

今井 仁
東海大学健康管理学|消化器内科 講師

消化器専門医。医学博士。2009年に東海大学を卒業し横浜市立市民病院で初期臨床研修と消化器内科医として勤務開始。東海大学にて博士を取得後2017年米国ミシガン大学に留学し腸内細菌の研究に従事。帰国後も継続して腸内細菌の研究、消化器内科の仕事、健診センターの仕事を掛け持ちし日々研鑽を積んでいる。

執筆者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士  

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

参考文献

I Rijnaarts, et al. Subtypes and Severity of Irritable Bowel Syndrome Are Not Related to Patients' Self-Reported Dietary Triggers: Results From an Online Survey in Dutch Adults. J Acad Nutri Diet. 2021 Sep;121(9):1750-1762.e8.

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