グッテレシピ

2024年12月27日

セリアック病、グルテン不耐症(過敏症)、小麦アレルギーの違いと対処法(食事・おすすめレシピ)

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)
執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)



米国登録栄養士の宮﨑です。今回は質問をいただくことの多い、セリアック病グルテン不耐症(過敏症)小麦アレルギーの違いについて紹介させていただきます。



 セリアック病、グルテン不耐症(過敏症)、小麦アレルギーの比較

近年グルテンフリー食が海外のみならず日本においても浸透してきています。そのような中で患者さんから質問を受けることが多いのが、小麦・グルテンに関連するセリアック病、グルテン不耐症(グルテン過敏症)、小麦アレルギーの違いについてです。

これら3つの病気・症状は小麦・グルテンに関連するものの特徴が大きく異なります。

セリアック病、グルテン不耐症(過敏症)、小麦アレルギーの比較

UCLA Health, Comparison of Gluten-Related Disorders(1)を一部改変

では次に各疾患・症状について詳しく見ていきましょう。

セリアック病の概要と対処法

セリアック病は小麦に含まれるたんぱく質の一種であるグルテンに対する遺伝性の自己免疫疾患です。具体的には、セリアック病の方では、グルテンが含まれる食品等を食べると、それらを異物とみなして異物から体を守るための抗体が作られ、その抗体が小腸の粘膜を攻撃してしまいます。

その結果、小腸から栄養を吸収できない形になり、下痢などの症状が出ることに加え、体に必要な栄養素が十分に摂取できなくなることや体重減少に繋がります。一方、グルテンの摂取をやめると、小腸が元に戻り栄養を吸収できるようになります。

世界全体では100人に0.5人から1人程度の有病率(2)ですが、日本含むアジアでは有病者が少ないと言われています。例えば2020年に公表された島根県で2055名の成人を対象に行われた疫学調査ではセリアック病の有病率は0.19%でした(3)。

検査としては抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体(tTG抗体)など複数の抗体検査があり、確定診断は内視鏡検査を経て行われます。アメリカではセリアック病が疑われる患者に対して抗体検査が行われることが多いですが日本では現在保険適応外となります。
セリアック病への対処法は厳格なグルテンフリー食の実行となります。

グルテン不耐症(過敏症)の概要と対処法

グルテン不耐症(過敏症)は英語ではNon-Celiac Gluten Sensitivity:NCGSと表現され、セリアック病や小麦アレルギーにかかっていない人々が、グルテンを含む食品を摂取することで引き起こされる腸内および腸外の症状を特徴とする症候群とされます。

症状としては下痢、膨満感、腹痛などの消化器症状に加えて、倦怠感関節痛などがあげられます。

スポーツ選手や有名人の多くの方が経験的に、グルテンを含まれる食品の摂取を避けると体調が改善したと情報を発信していることもあり、グルテンフリー食が欧米を中心に拡大しています。そのような中でこのグルテン不耐症(過敏症)が注目を集めています。

一方でグルテン不耐症(過敏症)についてはまだ学会内でも診断基準が定められていない状況で、検査方法等もありません。今後の研究の発展が期待されます。

なお、対処法はグルテンフリー食となります。

小麦アレルギーの概要と対処法

小麦に含まれる一つもしくは複数のプロテイン(グルテンを含む)に対する免疫反応です。小麦を食べた後にすぐに腹痛下痢や蕁麻疹、呼吸器の症状などが現れる即時型のアレルギーが多いと言われています。

小麦アレルギーは特異的IgE抗体検査、皮膚試験などが用いられますが、確定診断には、食物経口負荷試験という、医療機関等で実際に食事を摂取して体の反応を確認する検査が必要になります。

小麦アレルギーを発症した場合の対処法としては、グルテンのみならず小麦が含まれる食品を取り除く食事が重要となります。

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まとめ

今回の記事ではセリアック病、グルテン不耐症(過敏症)、小麦アレルギーの違いとそれぞれの特徴、対処法について紹介しました。

これら3つの病気・症状は小麦やグルテンに関連するものの、病態や特徴が異なることがお分かりいただけたかと思います。

小麦製品を食べて何か気になる症状が現れた場合は、自分で判断せず病院に行き専門の先生に相談してみましょう。



参考文献・情報:

(1)https://www.uclahealth.org/medical-services/gastro/celiac-disease/patient-resources/comparison-gluten-related-disorders
(2)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6647104/ 
(3)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7411563/#:~:text=Conclusions,consistent%20with%20our%20previous%20results.


監修者

今井 仁
東海大学健康管理学|消化器内科 講師

消化器専門医。医学博士。2009年に東海大学を卒業し横浜市立市民病院で初期臨床研修と消化器内科医として勤務開始。東海大学にて博士を取得後2017年米国ミシガン大学に留学し腸内細菌の研究に従事。帰国後も継続して腸内細菌の研究、消化器内科の仕事、健診センターの仕事を掛け持ちし日々研鑽を積んでいる。

執筆者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士  

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

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