執筆者:井本 かおり(管理栄養士)
潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の活動期や狭窄がある時は消化管の負担を減らすため、食物繊維を1日10g未満になるよう控え、特に不溶性食物繊維は、狭窄部で腸閉塞をもたらす恐れがあるため避けた方が良いとされています。
また、野菜は皮や種などを除いて、柔らかく煮る、できるだけ繊維を短く、ミキサーでペースト状に潰すといった調理の工夫が必要となります。
ミキサーで食品をペースト状に潰す時には、いくつかのポイントがあります。今回のコラムでは潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の方向けのミキサーを使って調理をする時のポイントをお伝えします。
狭窄の方向けの食事については過去のコラムもぜひご覧ください。
ペースト状に適した野菜の選び方
ペースト状にするのに適した食材と不向きな食材があります。ペーストにするときには以下のような野菜を選ぶようにします。
- ほうれん草など葉物野菜の穂先
- いも類やかぼちゃなどでんぷん質が多い食材
- 大根や人参、玉ねぎ、かぶなど煮ると柔らかくなる根菜
- ナスやトマト等の果実類
- ブロッコリーやカリフラワーの花蕾
野菜の水煮や冷凍野菜を使うことで、切るひと手間を省くことが出来ます。ぜひ活用してみてくださいね。
野菜以外の果物等の調理のポイントはこちらのコラムで紹介しています。
ミキサー使用時のポイント
1.一度に複数の食材をミキサーにかけない
複数の食材を一緒にミキサーにかけると見た目や味、においが悪くなることがあります。一度にミキサーにかける種類を1~3種類までに止めると彩りが綺麗なまま、食品本来の味や香りを楽しむことができます。
2.水分で硬さを調整する
滑らかに仕上げるために水(お湯)や出汁で水分を調整し、しっかりと攪拌して滑らかな状態にします。水分調整には水(お湯)よりは出汁や豆乳、低脂肪牛乳を選ぶと味に深みが増します。
ポタージュ状のとろみを目指して、水分で硬さを調整してください。
3.熱い物をミキサーにかけない
熱い材料に使用した場合、蓋が突然勢いよく飛び、具材が飛び散ることによるやけどの恐れがあり危険です。
材料を人肌程度まで冷ましてからミキサーにかけると安全です。
実は私も熱いものをミキサーにかけて具材が飛び散った経験があります。みなさまも怖い経験をしないよう、熱い食材は冷ましてからミキサーにかけてくださいね。
エネルギーやたんぱく質を補いたい場合
ミキサーでなめらかな状態にするために水やだし汁でかさが増します。そのため、摂れる栄養量が低下しがちです。
エネルギーやたんぱく質を付加したい場合は絹ごし豆腐を足したり、水やだし汁の代わりに豆乳、低脂肪牛乳などを使うことで栄養を補うことができます。
また、和の味のものをミキサーにかける場合にはかつお節を小袋(2g)1袋足すことで、たんぱく質を1.3g付加できます。
*日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より
かつお節は脂質がほとんどなく、たんぱく質を手間なくちょい足しできる食品です。食欲がない時にご飯にふりかけてもいいですよ♫
ミキサーを使ったレシピ
グッテレシピの中からミキサーを使った野菜レシピを2点ご紹介します。
どちらのレシピも患者さん以外の方もおいしく召し上がれるレシピです。
患者さんもご家族の方も一緒に召し上がってくださいね。
まとめ
今回は潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の活動期や狭窄の方向けに野菜をミキサーにかけるときのポイントについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか。
野菜は皮や種などを除いて、柔らかく煮る、できるだけ繊維を短く切るといった調理法も合わせて活用してください。
グッテレシピからお知らせ
グッテレシピでは引き続きご提供していただけるレシピを募集しています。いつもご家庭で作っているレシピ、イベント時のレシピなどぜひご提供ください。細かな量が分からない、作り方を書くことが難しい場合はグッテ管理栄養士でフォローする事も可能です。
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監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士
管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。
参考文献:
炎症性腸疾患患者さんの食事について Q&A「令和元年度において、厚生労働科学研究費補助(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))を受け、実施した研究の成果」難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)
~IBDにおける栄養学の科学的根拠と実践法~潰瘍性大腸炎とクローン病の栄養管理 講談社