執筆者:井本 かおり(管理栄養士)
低FODMAP食事療法を実践している方々は、すでにニンニクが高FODMAP食品であることをご存知かと思います。ニンニクは1gと微量でもFODMAP量が多いため、低FODMAP食をされている方は避けた方が良い食品です。
今回は、ニンニクに含まれるFODMAP成分や、ニンニクの風味を得るためのコツについて詳しくご紹介いたします。
まずは、低FODMAP食は何かを簡単に説明しましょう。
低FODMAP食は食事が原因での腹痛や下痢、膨満感などの消化器症状を有する方向けの食事療法です。FODMAPとは、腸で完全に消化吸収されない糖のグループの総称で、Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖 (ガラクトオリゴ糖、フルクタン))、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖類)、Polyols(ポリオール)の頭文字から付けられたものです。
低FODMAP食とニンニク
ニンニクにはFODMAP(フォドマップ)の内、フルクタンが多く含まれているため、わずかな量でも高FODMAPに該当する食品です。そのため低FODMAP食の制限期間(FODMAPが含まれている食品を可能な限り取り除く期間)では、ニンニクを避ける必要があります。
ニンニクにはフルクタンが多く含まれているのですね!ところでフルクタンって何でしょうか?
それでは次はフルクタンについて説明します!
フルクタンの役割
フルクタンはヒトの消化酵素で分解されず、腸まで到達して腸内細菌に利用される難消化性のオリゴ糖・多糖類で、腸内環境を良くすることで知られています。ニンニク以外に、タマネギ、小麦、ゴボウ、アスパラガスなどの植物にも含まれています。
腸内細菌に利用され発酵された結果、ガスが消化管内に滞留し、腹部の膨満感や痛みにつながると考えられています。
フルクタンは一般的に腸内環境には良い影響をもたらすことが示されていますが、個人によって影響が異なります。もし腸の不快感や消化トラブルがある場合は、原因となる食品の食べる量を調整しながらバランスの良い食事を摂取するようにします。
参照:タマネギの糖質分解に関わる新規酵素遺伝子を同定
~タマネギの生産性向上や機能性タマネギの育成への貢献に期待~ - 弘前大学 (hirosaki-u.ac.jp)
参照:米国登録栄養士がゼロから教える栄養学「低FODMAP(フォドマップ)食」 | Udemy
ニンニクに含まれるフルクタンの性質
ニンニクに含まれるフルクタンは水溶性のため、水には溶けますが油には溶けない性質があります。
ニンニクをスープや水で煮ると、フルクタンの一部が液中に溶け出してしまいます。そのため、ニンニクをスープや水に入れて調理し食べる前に取り出すといった方法では、すでに液中にフルクタンが溶け出してしまっているため、フルクタンを避けることはできません。
しかし、油の中にニンニクを入れて加熱をした場合は、フルクタンの成分が油には溶けださないのでニンニクの風味だけをつける事は可能で、一般的には「ガーリックオイル」という名称で売られています。
フルクタンを控えたい時でも、油の中にニンニクを入れて風味だけをつける事は可能なんですね!「ガーリックオイル」を自分で作る場合の方法があれば教えて欲しいです。
分かりました!電子レンジで簡単に作ることが出来る「ガーリックオイル」の作り方についてお話します♪
電子レンジで作るガーリックオイルの作り方
【材料】
ニンニク 小さめの2片
オリーブオイル(その他お好みの油)大さじ1
- 小さめの耐熱容器にニンニクとオリーブオイルを入れます。このとき、にんにくがオリーブオイルに浸かるようにします。
- ラップなど蓋はせず、電子レンジ600w30秒から様子を見ながら、ニンニクが透明に近い色に変わるまで加熱します。
- 加熱後しばらく置いておくことで、風味がより強くなります。
【アドバイス】
※ニンニクが焦げると、苦味がでます。底の小さい耐熱容器を使い、オリーブオイルにニンニクが浸ると焦げにくくなります。ニンニクの加熱具合をみながら加熱時間を調整してください。
※ニンニクを刻むとより風味が出ますが、誤って食べてしまう可能性が高いので、切らないか、もしくは切っても半分に留めます。
※細かいニンニク片が出て気になる時は、網しゃくしなどで濾すと安心です。
※ニンニクを沢山入れることで、より風味が強い「ガーリックオイル」に仕上がります。レシピに合わせて量を増やしてください。
また、ガーリックオイルはこのような使い方ができます。
- 塩コショウ、酢と合わせてドレッシング
- ペペロンチーノ風の米粉パスタ
- 焼いた肉や魚にハーブと一緒に振りかける
なお患者さんによっては油脂を多く摂りすぎるとIBS症状の引き金になる可能性があります。体調に合わせてお使いください。
「ガーリックオイル」は炒め油として使うと炒めている間に風味が消えてしまいます。より風味を感じたい場合は「ガーリックオイル」を最後の仕上げにひとふりします。
電子レンジで簡単に作れるんですね!「ガーリックオイル」以外にニンニクの代わりになる食品はありますか?
ニンニクの香りと同じ成分が含まれた野菜を使うのもお勧めです!
ニンニクの香りと同じ成分を含む野菜
ニンニクの香りの成分は「アリシン」という物質です。「アリシン」はニンニクだけでなく、ニンニクの芽やネギ、ニラにも含まれていて、ニンニクの代わりにこれらの野菜を代替として使用することで、料理に独自の風味を加えることができます。
参考:からだにおいしい野菜の便利帳
ニンニクの芽
ニンニクの芽は30g程度までは許容量です。食べ過ぎを防ぐため、細かく切って少量をトッピングとして使うと風味が広がりやすいです。
ネギ
白い軸の部分は高FODMAP食として知られていますが、みそ汁に少し入れる程度(14g)は許容量です。葉の部分は低FODMAP食です。
ニラ
低FODMAP食の食品です。
ニンニクの風味を他の野菜で補う事ができるなんて知らなかったです。食事の幅が広がりますね♪
おわりに
今回はニンニクが食べられない人向けにアイデアをまとめました。暑い季節には、ガツンとした風味の味付けが食べたい方は、ニンニクの代わりにガーリックオイルやネギ、ニラ、にんにくの芽を上手に活用し、暑い夏を乗り切りましょう!
最後にガーリックオイルを使った素敵なレシピをご紹介します♪
このぴさんレシピ「米粉チヂミの餃子風味」
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士
管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。