お酒・アルコールとの付き合い方 ~潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、低FODMAP(フォドマップ)食実践中の方向け~

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)

こんにちは!グッテ管理栄養士のKaoriです。

今回のコラムでは、IBD患者のためのオンラインコミュニティ Gコミュニティhttps://gcarecommunity.com/)でいただいたご質問を元に、一般的なアルコールの消化管への影響やお酒の適量について、また潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)の方、低FODMAP(フォドマップ)食を実践中の方向けにお酒との付き合い方についてもご説明します。

アルコールの消化管への影響

口から入ったアルコールは胃から20%、小腸から80%が吸収され、そのほとんどが肝臓で体に必要な物質に変えたり(=代謝)、解毒されます。お酒を飲みすぎると肝臓に負担がかかる理由は、肝臓の解毒作用が追い付かず大きな負担がかかるからです。

また、アルコール度数が高いお酒や飲む量が多いと、水分や電解質が腸から体への吸収が悪くなり、体の外に出る量が増えます。さらに糖や脂肪の分解・吸収も低下し、下痢を起こしやすくなります。

お酒は「食前酒」として食事の前に軽く1杯飲むことで、消化酵素の分泌を増やしたり胃の血流を良くすることで胃腸の動きを活発にし、食欲増進にもつながりますが、たくさん飲むことは控えた方がよさそうです。*1

一般的なお酒の適量は?

厚生労働省は「健康日本21(第二次)」で、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上と定義しています。

また、「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度であるとしています。*2

ウイスキーや焼酎など、アルコール度数の高いお酒はお水で薄めるなどして飲むようにしましょう。

また、毎日お酒を飲むと、肝臓や胃、腸などに負担をかけてしまいます。週1日以上の休肝日を作りましょう。

純アルコールの計算方法

純アルコールは純アルコール量を計算してみましょう。

管理栄養士
かおりさん

純アルコールの量(g)=アルコール飲料の量(mL)×アルコール濃度(度数/100)×アルコール比重(0.8)

純アルコール20gに相当する酒量

下記の表は「節度ある適度な飲酒」に該当する1日平均純アルコールで約20g程度のお酒の量をあらわしたものです。図を普段の飲酒量の参考にしていただければと思います。

IBDでもお酒は飲めますか?

アルコール類は活動期には控えるべきとされています。

寛解期については特に制限はありませんが、「一般的なお酒の適量」の範囲内で楽しむのが良いでしょう。

アルコール類の過剰摂取は腸管からの水分・電解質の吸収を悪くし、腸内細菌叢も変化させるといわれているため、下痢が悪化する可能性があります。

お酒を炭酸で割る場合、炭酸飲料は寛解期では特に制限はありませんが、腸管内でガスが溜まるため、飲み過ぎには注意が必要です。

消化器症状については個人差があることから、少量で腹部症状が悪化する場合は、量は控えめにするのが良いでしょう。また、アルコール類の摂取については主治医に相談しましょう。*3

IBSでもお酒は飲めますか?

観察研究によると、短時間にたくさんのお酒を飲むことと下痢の症状が悪化することが関連しているようです。

しかし、少量のお酒を飲む場合は、IBSの症状が悪化することとの関連は明確ではありません。また、お酒の摂取習慣を変えることがIBSの症状改善に役立つかどうかについては、はっきりしたエビデンスはありません。*4

アルコールは消化管に影響を及ぼす作用があるため、少量~「一般的なお酒の適量」程度の酒量にし、消化器症状が悪化する場合などは飲酒量を調整するか控えましょう。

低FODMAP(フォドマップ)食とお酒

低FODMAP食は、特定の糖質(FODMAPs)を制限する食事法です。低FODMAP食を実践している場合、FODMAPの量が少ないお酒を選びます。

低FODMAPのお酒であっても、アルコールは消化管に影響を及ぼす作用があるため、お酒は楽しむ程度にし、消化器症状が悪化する場合などは飲酒量を調整するか控えましょう。

アルコール類 FODMAPリスト

低FODMAP食を実践中の方は下記の図を参考にお酒を選択していただければ幸いです。

※日本酒、焼酎など日本独自のお酒についてはFODMAPが不明です。                     それらのお酒を飲む場合は少量(1/3量ほど)からお腹に合うかを試し、個々の症状に合う量を飲むようにします。

お酒のおつまみにお勧めのレシピ

アルコールは空腹時に飲む方が血中アルコール濃度が高くなります*5。また、お食事と一 にゆっくりと楽しむ事で飲酒量を減らす効果もあります。お食事を召し上がりながらお酒を楽しめるといいですね。

ただ、飲酒の際のおつまみは、脂質の多いものや味の濃いものが多いので、内容にも気を付けましょう。

今回、グッテレシピからご紹介するレシピは、おつまみにピッタリなのに、脂質が低く、薄味のものを選びました。

グッテレシピのタグ「お家で居酒屋」で検索していただくと、お酒のおつまみにピッタリ!な、体調に合わせたレシピが揃っていますので、ぜひご活用ください♫

 

  

まとめ

患者さん個々人の状況によって、お酒をどの種類をどの程度飲めるかついては大きく異なります。一番症状を理解されている主治医の先生や担当されている管理栄養士さんに、飲酒量などについてぜひ相談していただけたらと思います。

管理栄養士
かおりさん

グッテコラムでは『こんなことを特集してほしい!』というテーマをまだまだ募集しています。何かご希望のある方はご連絡いただけると嬉しいです。

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監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。

参考文献