非常時に備えて準備をしたい食品~潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)の方から一般の方まで~

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)

令和6年の始まりから大きな地震が能登半島を中心とした地域を襲いました。この度の震災による被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧・復興をお祈りいたします。

震災から改めて非常食の必要性を感じられた方も多いかと思います。そこで今回のコラムでは非常時に用意しておくとよい食べ物や震災時に役立つアイテムを紹介したいと思います。

何日分の食料を準備するとよいでしょう

事前の備えとしては最低3日分程度の水と食料の確保が必要といわれていますが、IBDやIBSなど慢性疾患の方や食物アレルギーの方、乳幼児など通常の食事では対応が難しい方は、東日本大震災発生時に半数以上の方が1週間以上アレルギー対応食品を入手できなかった*1という回答を踏まえて、1週間分準備するようにしましょう。

また、被災時に体調が崩れることを防ぐ意味から普段から食べ慣れている食品を中心に備蓄することが必要になります。

*1) アレルギー2012;61:642-651

必要な非常食リストを作成しましょう

まず、最低3日分 (9食分)、できれば1週間分の水とカセットコンロ等の熱源を確保するようにします。
その際、主食+主菜+α(副菜等)を意識しながら、普段の生活で活用している食品を中心に揃えられるようにリストを作成します。

飲料水として直接飲む水を1Lとし、その他、調理に使用する水などを含めると1日3Lほど用意しておくと安心です。
最低3日分(3L×3日分=9L)、出来れば7日分(3L×7日分=21L)用意します。

主食
  • 無洗米(1人当たり2㎏で1週間分の量)
  • レトルトご飯
  • 乾麺(そうめん、うどん、そば等)
  • インスタント麺
  • 小麦粉、米粉
  • シリアル など

主菜・副菜・汁物・果物
  • 缶詰(肉・魚・果物などお好みのもの)
  • レトルト食品(カレー、丼もの、パスタソースなど)
  • フリーズドライ食品(汁もの、野菜など)
  • 乾物(野菜フレーク、切り干し大根、海苔、わかめ、ひじきなど)
  • 日持ちする野菜(玉ねぎ、じゃがいも、にんじんなど)

調味料・菓子

食べ慣れたお菓子や嗜好品をローリングストックで備蓄しておきましょう。
調味料は在庫を切らさないようにし、使った分を新しく買い足して常に少し多めに保管するようにします。

飲み物

常温保管が可能な牛乳や豆乳、アーモンドミルク、ジュースなどは必要に応じて備蓄しましょう。

食品と一緒に備蓄したいもの

カセットコンロ

1人当たり1週間分でボンベ6本の備蓄が必要と言われています。
ガスが復旧するまでの間、温めたり、お湯を沸かしたり、調理する際にカセットコンロがあると便利です。温かい食事や飲み物は、不安な気持ちや緊張感をやわらげてくれると思います。

あると便利な消耗品

  • 食品用ポリ袋(パッククッキングができる耐熱温度130℃以上の湯煎対応のもの)
  • ラップ
  • アルミホイル
  • クッキングシート
  • クッキングペーパー
  • 紙皿、紙コップ
  • 割り箸、使い捨てスプーン
  • 使い捨て手袋

参照:要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド(農林水産省)

パッククッキングについては農林水産省のホームページ「時短にも非常時にも!パッククッキング」に掲載しています。

家庭にある食料品を確認しましょう

まずは、現在ご家庭にある食料品の中で、作成した非常食リストを元に災害時に使える食品の個数や賞味期限を確認します。
作成した非常食リストと比較をして現時点で不足している食品を把握します。

ローリングストックで準備をしましょう

普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使った分を新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法をローリングストックと言います。

ローリングストックの方法は、

  1. 通常購入している保存が長い食料品を少し多めに「買い置き」をする。
  2. 賞味期限が近づいたものは、普段の食事に取り入れる。
  3. 消費した分を新たに補充する。
  4. 1から3を繰り返す

補充を忘れたタイミングで災害が来る可能性もあります。消費した分の補充は忘れずに行いましょう。

防災用の食品のみで備蓄をする場合と比べローリングストックで揃えることで、

  • 費用面が比較的安い
  • 日常生活に近い食生活が可能
  • 食べ慣れていない食品を食べる不安や体調を崩すリスクを減らす

といった良い面があります。

まとめ

非常時には日常生活にはほど遠い生活で食事面以外にもたくさんのストレスがかかることでしょう。
そのため特に潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)の方は食事面を中心に非常時も可能な限り普段の通りに送ることが出来るように準備をすることが体調維持のために必要となります。
非常食の準備は「いつかやろう」と先延ばしせずに今すぐ備蓄を始めましょう。

遷移後少ししてからメルマガ登録のポップアップが表示されます。
監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。