グッテレシピ

2025年4月18日

お腹にやさしいチーズとの付き合い方

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)

チーズはたんぱく質やカルシウムが豊富で栄養価の高い食品。しかし、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、乳糖不耐症を持つ人にとっては、お腹の調子に影響を与える場合もあります。

今回の特集では、チーズの栄養価や付き合い方についてお伝えします。


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チーズの栄養価について

チーズは牛乳と比較し、エネルギーが5倍、そのほかの栄養素も牛乳と比較すると多く含まれています(図1)。特に多く含まれているのが カルシウムたんぱく質脂質 です。

図1)チーズと牛乳100gあたりの栄養価

「日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補」より作成

カルシウム

チーズはカルシウムがとても豊富です。カルシウムは骨や歯をつくる材料として知られています。

それ以外にも、筋肉の動きを滑らかにする神経の働きを保つ、ケガをした時に傷口で血液を固めるのを助けるなど、体のあちこちで大事な役割をしています。[*1]

カルシウムの1日の推奨量は18~29歳男性で800mg、30~74歳男性で750mg、75歳以上の男性で700mg、18~74歳女性で650mg、75歳以上の女性で600mgとしています[*2]。種類にもよりますが、プロセスチーズなら16g(6Pチーズ1個分程度)で牛乳100ml程度(約100mg)のカルシウムがとれるため、効率よく補給できます。

たんぱく質

たんぱく質は、筋肉や内臓、皮膚、髪の毛、爪など体のあらゆる部分をつくる材料です。また、エネルギー源としても使われます。
チーズには、牛乳よりも濃縮された形でたんぱく質が含まれているのが特徴です。たとえば、牛乳1杯(200ml)に含まれるたんぱく質は約6.6gですが、プロセスチーズ30gには約7gと、少量でたんぱく質を多く摂ることができます

脂質(特に飽和脂肪酸)

チーズには脂質も多く含まれており、たくさんのエネルギーを生み出します。ただし、血液中のLDLコレステロールが増加する可能性がある飽和脂肪酸が多く含まれているため、摂りすぎには注意が必要です。

脂質について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご確認ください。

潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)と脂質(飽和脂肪酸、オメガ3など)

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士) この記事で抑えたいポイント はじめに 潰瘍性大腸炎やクローン病(IBD)患者…

潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)とチーズ

IBDの方は、健康な人に比べて乳糖の吸収不良がみられることが報告されています。ただし、乳糖の摂取がIBDの発症や増悪に関係するという明確な証拠はありません。しかし、チーズに多く含まれる飽和脂肪酸は炎症を悪化させることが報告されています。[*3]そのため、乳製品でお腹の症状(乳糖不耐症のような症状)が出ない方であれば、乳製品を摂取しても問題ありませんが、チーズには飽和脂肪酸が多いため、量を摂りすぎないことや、脂質が少ないカッテージチーズやリコッタチーズを選ぶといいでしょう。[*3]

過敏性腸症候群(IBS)とチーズ

過敏性腸症候群(IBS)の食事療法のひとつに、「低FODMAP食」があります。これは、腸内でガスや不快感を引き起こしやすい発酵性の糖質(FODMAP)を控えることで、IBSの症状を和らげることを目的とした食事法です。

FODMAPの一種に「乳糖(ラクトース)」があります。乳糖は牛乳やヨーグルトなどの乳製品に多く含まれています。そのため、乳糖を控えることは、低FODMAP食の食事管理における重要なポイントのひとつとなります。[*4]

ただし、すべての乳製品がNGというわけではなく、ほとんどのチーズは乳糖量が少なく摂取することが可能です。

 乳糖不耐症とチーズ

乳糖不耐症の人は、糖質の1つである乳糖(ラクトース)をうまく分解できないため、牛乳などを飲むとお腹がゴロゴロしたり、下痢になることがあります。

「チーズ=乳製品だから食べられない」と思っている方も多いかもしれません。でも、チーズは比較的乳糖が少ない乳製品ですべてのチーズがNGというわけではありません

図1にあるように、パルメザン、プロセスチーズなど多くのチーズは、製造過程で乳糖が分解されほとんど含まれていません。このため、乳糖不耐症の方でも、これらのチーズは症状が出にくいとされています。
一方で、クリームチーズには乳糖が残っているため、症状が出やすい方は量に注意が必要です。少量から試し、自分に合うかどうかを見ながら取り入れましょう。[*4]

乳糖不耐症と乳製品アレルギー(乳アレルギー)は別のものです。混同しないように注意が必要です。

  • 乳アレルギーは、牛乳に含まれる「カゼイン」などのたんぱく質に対するアレルギー反応です。じんましんなどの皮膚症状、呼吸困難、消化器症状などがあり、アナフィラキシーなど命にかかわる重い症状が出ることもあります。[*5]
  • 乳糖不耐症乳糖(ラクトース)という糖質をうまく消化できないことで、主に腹部の不調が起こる状態です。

つまり、乳糖不耐症の方は乳糖の少ないチーズなら食べられる場合もありますが、乳アレルギーの方はチーズは牛乳よりたんぱく質が濃縮されているため、アレルギー症状が出やすくなる可能性があり注意が必要です。[*5]

まとめ

チーズはカルシウムやたんぱく質が豊富で、栄養価の高い食品です。しかし、体調や症状によって合う・合わないがある食品でもあります。

種類や量を工夫しながら、今回のコラムを参考に取り入れていただければと思います。

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監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。


参考文献:

*1 日本図書センター 野菜と栄養素キャラクター図鑑

*2    日本人の食事摂取基準(2025年版)

*3 講談社 潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ

*4    Monash University Low FODMAP diet https://www.monashfodmap.com/

*5 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022

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