潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)患者さんが知りたいラーメンの選び方・楽しみ方

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)


ラーメンは種類も多く、気軽に食べられる主食として、大人も子どもも大好きなメニューではないでしょうか。

今回のコラムではラーメンについて、潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんが注意するポイントや選び方についてお伝えしたいと思います。


ラーメンを食べるときにIBDの患者さんが気になる点

1.脂質が多い

ラーメンのスープやインスタント麺は脂質が多い商品も多く、脂質量を制限されている方は注意が必要です。また脂質の質についてもIBDでは摂取を控えた方がよいお肉などに含まれる飽和脂肪酸が多いスープもあるので、確認が必要です。

具体的な脂質の量は、

活動期で重症度が高い場合は、1日30g未満程度の脂質量を目安にするのがよいと考えられています。寛解期の場合は健康的な人に比べてやや少な目~同程度(脂質エネルギー比:20~25%程度)と考えられています。*1

スープは豚骨をベースにしているものは脂質が多くなりやすく、スープまで飲み干すと、塩分だけでなくかなりの量の脂質を摂ることになってしまいます。

また、最近人気の高い「背脂」は豚の背ロース部位に付いている脂身のことで、100gあたり脂質は74.9g飽和脂肪酸は30g含まれています。*2

各ラーメンに含まれるおよその脂質の量(以下で紹介)を把握しておくとラーメンを選択する際に安心かもしれません。

2.辛みが強い

辛みが強いラーメンに入っている唐辛子などの香辛料は消化管へ影響を与えることがあるため、香辛料に敏感な方は量を調整するか控えるようにしましょう。*1

3.麺の小麦(グルテン)

海外の研究では、IBD患者さんの5~28%がグルテン不耐症のような症状を示していて、特に活動期に症状が出やすいことが報告されています。しかし、グルテン不耐症が無ければ小麦を摂取しても問題ないことも多いです。*1
また小麦で消化器症状が出やすい方も量の調整が有益であることもあります。

4.麺に入っている「かんすい」

かんすいの主成分は主に炭酸カリウムと炭酸ナトリウムです。かんすいに関して現在IBDの炎症と関連が強いという科学的根拠は得られていないようです。

もし、かんすいが含まれているラーメンなどで症状が出る場合はかんすいが入っていないものに変更するのも一案です。逆に特に問題もなく食べる頻度も少ない場合は、あまり気にしなくても良いかと思います。

5.野菜を使った具材の選択方法

メンマやもやし、コーン、ねぎなど消化管に負担が大きい野菜は体調に合わせて控えましょう。

油で炒めた野菜は、炒めない場合よりも脂質を5g前後多く摂ってしまいます。野菜の調理方法についても意識するようにしましょう。

ラーメンの栄養価

ラーメンはとんこつ、醤油、味噌、など様々な味から好みを選ぶことが出来ます。一般的なラーメンの栄養価について下記の図から分かることは、

  • スープの味によって脂質量が大きく変わること
  • とんこつラーメンは脂質が25.0gと特に多い。
  • インスタント麺はノンフライ麺を選ぶことで脂質をかなり抑えることが出来ること

です。

引用:第5版エネルギー早わかり 女子栄養大学出版部 p.29,170-171

ラーメンはスープの違い以外にも、チャーシューの肉の部位や卵などの具材の量や選び方でかなり栄養価が変わります。

IBDの方向けラーメン調整法

  • 脂質を低く抑えるには、豚骨ラーメンよりは鶏ガラや野菜スープ、かつおや煮干し出汁を使ったラーメンを選ぶようにします。
  • こってりしたラーメンが食べたい場合は、脂質を抑える観点でスープを出来るだけ残すようにしましょう。
  • チャーシューは脂身が少ないものを、野菜は体調にあった状態のものを使うようにしましょう。
  • 小麦で症状が出る方はグルテンフリーの麺など小麦を使っていない麺を選ぶようにしましょう。
  • 麺の茹で加減も選択できるお店の場合、できるだけ「やわらかめ」を選択することや、胃腸への負担軽減のためにもよく噛んで食べるようにしましょう。

脂質を抑えたラーメンの作り方

グッテレシピに掲載されている脂質を抑えたラーメンのレシピをご紹介します。 

和風しょうゆラーメン | グッテレシピ

潰瘍性大腸炎/クローン病/過敏性腸症候群/お腹の弱い方向けレシピ


煮干しかつおだしとオイスターソースを使うことで脂質を出来るだけ低く抑えたスープが完成!!麺や具材はお好みの物をセレクトしてくださいね。

まとめ

IBD患者さんがラーメンを食べる場合、使われるスープやトッピングの肉類には脂質、特に飽和脂肪酸が多く含まれているもののがあること、具材は体調に合わせて選ぶこと、小麦で症状が出る場合は控える点がポイントとなります。

個々の体調に合わせて、量や食べる回数、内容(味、具材)に気をつけた上で食べるようにしてください。

ラーメンなど麺類はあまり噛まずに飲み込んでしまいがちですが、消化管に負担がかかるためできるだけよく噛んで食べるようにしましょう。

食材の判断に迷う場合は主治医の先生や管理栄養士に相談してみてください。

管理栄養士
かおりさん

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参照
  • *1 潰瘍性大腸炎とクローン病の栄養管理 講談社
  • *2 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。