執筆者:井本 かおり(管理栄養士)
お子様が潰瘍性大腸炎/クローン病(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)を抱えている時に、給食とどのように付き合っていくのかについて悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は小学校、こども園で管理栄養士として勤務歴があり、IBSの息子がいる私が、学校や園での対応方法や面談の際に必要な情報、子どもへのケアについてご紹介します。
学校給食での食事制限への一般的な対応
原則:学校や園では、児童、園児が一緒に安全に給食を食べることが出来る事が理想ですが、児童数、施設の形態や人員、予算などの理由により、完全に全ての子どもに対応することが難しいのが現状です。
また、給食では食物アレルギー児への対応マニュアルは確立されていますが、病気を抱える子どもに関する対応は決まっていません。学校や園によって、疾患に対応できる範囲が異なるため、事前に通う予定の園や学校に給食について対応範囲を確認することが大切です。給食の食事量を減らすといった対応は、教室での盛りつけ時に対応できる事も多いです。そのような場合は事前に学校や園との打ち合わせが必要です。
食物アレルギー児への対応方法を知っておく
学校によっては、食物アレルギー児への対応マニュアルを参考にし、IBDやIBS、その他疾患を持つ児童への給食に対応しています。そのため、食物アレルギー児への対応方法を理解することは、学校や園への説明にも役立つことでしょう。
では、いったい食物アレルギー食への対応はどのようにされているのでしょうか?
給食においては、食物アレルギー児への対応に関して栄養の量を調整しないこと(例.1食あたり脂質15gなど)がほとんどです。そのため、IBDやIBSなどの疾患を持つ子どもたちに対しても同様の対応になる可能性が高いです。
また、給食での食物アレルギーやその他個別対応は「安全性を最優先に、学校及び調理場の施設設備、人員等を鑑み無理な(過度に複雑な)対応は行わない」ことが大原則としてあります。そのため、子どもの食事制限に関する要望を全て満たせないこともあります。学校や園での対応は以下のような方法があります。
学校や園での対応方法
- 代替食
食べられない献立の代わりに違う献立を提供すること。(例)オムレツ→鶏肉の照り焼き - 除去食
献立の中に入っている食べられない食品だけを取り除き提供すること。(例)かきたま汁の卵を入れずに仕上げる。
上記対応が難しい場合は、弁当での対応を検討します。具体的には以下の2つの対応があります。
- 一部弁当対応
食べられない献立のみ、家庭から弁当を持参をする対応。 - 完全弁当対応
給食をまったく食べずに弁当を家庭から持参をする対応。
このように4つの対応方法があります。
食べた時の体の反応や家での対処法などを共有することで、皆さまにあったベストな対応が見つかると嬉しいです。
市独自の食物アレルギー指針にて除去食についての対応方法を確認出来るとより理解が深まります。ホームページで確認が出来る場合が多いので一度目を通すようにします。
学校側に代替食や除去食を依頼する場合は「乳製品と小麦は食べられません」といった具体的な食品名を挙げて、学校や園に対して説明すると理解されやすいでしょう。
学校給食でできる対応のまとめ
IBDの場合
- 食物アレルギー対応のように特定の食べ物のみを代替、もしくは除去をすることはできる可能性があります。
- 栄養価での調整は難しい
- 特定の食品を取り除くような食事が必要か主治医と相談し、それを踏まえて学校と相談
- 難しい場合は一部、もしくは完全弁当での対応になります。
IBSの場合
- 消化器症状を引き起こす食品が何かが特定されている場合は、食物アレルギー対応のように特定の食べ物のみを代替、もしくは除去をすることはできる可能性があります。
- 消化器症状を起こす食品が複数存在する場合は取り除くことが難しい可能性がある
- 必要に応じて主治医と特定の食品を取り除くべきか相談し、それを踏まえて学校と相談
- 難しい場合は一部、もしくは完全弁当での対応になります。
我が家の場合は対応が難しかったため、お弁当での対応でした。。皆さま毎日のお弁当作り、本当にお疲れさまです(;_;)
学校と話し合うためのステップ
- 事前に主治医に相談
合わせて学校や園で必要な診断書など提出書類を確認し、事前に準備をしておきます - 学校に病気の説明をする
どのような時に症状が出るか、普段行なっている制限、普段の食事内容、どのような症状が出るかを具体的に説明します。献立表や代替食メニュー表も事前に確認します。学校との普段の連携方法も確認します。 - 給食の献立表の内容と連携
事前に給食内容をチェックをし、担任を通じて除去が必要な献立を学校・園に伝えます。お弁当を持参する場合は、学校・園での保管方法も確認をします。
子どもへのケアや配慮
- 友だちと給食が違うことや、弁当を食べる事を分かりやすく説明
- 毎朝、子どもに給食のメニューと何が食べられないか、弁当を持っていくかの確認を習慣にする
- 友だちと遊びに行った時のおやつはどう対応をするか事前に決めておく
事前にフォローをしておくことで、子ども自身が理解し、安心して生活を送ることにつながります。
まとめ
学校や園では食物アレルギーに対する対応は確立されつつありますが、疾患に対する食事療法への給食対応については、個人差が大きく対応が確立されていません。
そのため家庭からの具体的な説明と学校が出来る内容を事前に話し合う事が大事です。
参考文献:文部科学省「学校給食における食物アレルギー対応指針」
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士
管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。