グッテレシピ

2024年9月20日

狭窄のある方必見!流動食の基本と工夫~クローン病当事者くにさんとの対談~

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:福多 小夏(管理栄養士):井本 かおり(管理栄養士):くにさん(クローン病当事者)


潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)で、主にクローン病の合併症のひとつとして狭窄があります。狭窄とは、腸が硬く狭くなった状態のことです。狭窄がある場合の食事は、安全性を保つために低食物繊維食・低残渣食が推奨されています。*1

今回は通過障害を防ぐためのひとつである流動食についてと、クローン病当事者であるくにさんと管理栄養士かおりさんとの対談をお届けします。


狭窄について

狭窄ができるわけ

慢性の炎症をくり返すことで腸管壁が繊維化し、不可逆的に硬くなります。*1

その結果、腸の内腔が狭くなることがあります。

手術は必要?

食事後の腹痛や腸閉塞を引き起こすため、症状が頻回に起きる場合は手術が必要になります。*1

また、狭窄に伴って腸が詰まってしまった場合(腸閉塞)もその対象になります。*2

内視鏡的バルーン拡張術という選択

狭窄を起こした腸管まで内視鏡が届く場合は、外科手術ではなくバルーン(風船)で狭窄を広げることもあります。*2

流動食の基本と工夫

流動食とは、固形物を含まない、もしくは非常に少ない状態の液体または半液体状の食事のことです。消化されやすく、体内に吸収されやすい特徴があります。

<普通流動食>

術後や絶食後など通常の食事が摂れないときに一時的に摂るものです。長期間続けると栄養が不足する可能性が高いため、注意が必要です。

具体例)
重湯、具なしの味噌汁・スープ、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸し、ゼリーなど

<特殊流動食>

病気によって食事制限のある方向けに、低脂肪食や低たんぱく質食、ナトリウム制限食があります。

<濃厚流動食>

1mlで1Kcal以上のエネルギーが摂取できる高エネルギー食です。エネルギーだけでなく、栄養バランスも考慮された加工食品で、通常の食事での経口摂取が不十分な場合に使用されることを想定して作られています。*3

<飽きずに食べられる工夫>

  • 水ではなく煮汁を加えてミキサーにかける

かぼちゃの煮物や肉じゃがなどの煮物をミキサーにかけてペースト状にする場合は、煮汁を加えてミキサーにかけるようにしましょう。味が薄まらずに食べやすくなります。

また複数の食材を煮た場合は、食材ごとにミキサーにかけて盛り付けると見た目もきれいに仕上がります。

  • ポタージュにする

人参やじゃがいも、かぼちゃ、ほうれん草などの野菜を出汁やコンソメなどで味付けをして柔らかくなるまで茹でたら、ミキサーにかけてポタージュにするとビタミンの補給にもなります。とろみが足りない場合は、片栗粉などでとろみをつけると食べやすくなります。

  • 一食当たりの摂取カロリーが低くなるため、適宜おやつを活用する

エネルギー不足を防ぐため、ゼリーや果物(バナナ、すりおろしたリンゴ、缶詰の桃をミキサーにかけたものなど)を摂取しましょう。

<注意点>

  • たんぱく質が不足しないように注意する

卵、豆腐、白身魚を取り入れる

  • 食物繊維を摂りたいときは水溶性食物繊維を意識する

不溶性食物繊維を多く含んでいる食品(ごぼう、きのこ類、海藻、こんにゃくなど)は避けましょう。

野菜は皮や種を取り除くようにします。(きゅうり、なす、トマト、ズッキーニなど)

果物は皮や種が含まれているものは避けましょう。(いちご、キウイフルーツ、ブルーベリー、ドライフルーツなど)

狭窄がある方、または狭窄が気になる方はこちらのコラムをご参照ください。

狭窄のある方の食べ方の工夫 

~ 繊維を絶つ野菜の切り方 ~ 監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)執筆者:福多 小夏(管理栄養士) グッテレシピでは「体調からレシピを探す」ことができます。「体調…

くにさんとの対談

くにさん:先日腸閉塞で入院したため、現在、狭窄のための食事にしています。

かおり:現在の食事の内容を教えていただけますか?

くにさん:入院中~退院後は重湯がメインでしたが、水分が多く辛いので前回の診察で相談してお粥の食形態を上げ ています。

現在の食事は主食は五分粥、たんぱく質源は卵豆腐、具のない茶碗蒸し、豆腐、シーチキンの水煮缶詰、魚、ヨーグルトを摂っています。肉類は私には合わないので控えています。

スープは具なしです。主菜はにんじん、じゃがいも、かぶ、大根、かぼちゃなどを茹でてだしと合わせ、フードプロセッサーでピューレ状にしています。それと、エレンタールを1日3~4Pです。

くにさん:お粥と一緒に野菜を炊くことで煮る手間を省いています。お粥に野菜の味も移っておいしいです。

かおり:手間も省けて、おいしくなって良いアイデアですね!!

かおり:次の質問ですが意識している栄養素はありますか?

くにさん:普段意識をしている栄養素はたんぱく質と鉄、カリウムです。鉄は鉄欠乏の貧血があり、内服薬は副作用が出るので、出来るだけ食事で摂りたいなと思っています。2024.8.16のコラム「潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんが意識したい低脂質で鉄の多い食品」も参考になりました。

潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんが意識したい低脂質で鉄の多い食品

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)執筆者:井本 かおり(管理栄養士) 潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんは、消化器の炎症によりビタミンやミネラルといった…

かおり:参考にしていただきありがとうございます!

くにさん:コラムをみて、かつおにも多くふくまれているんだなと思って、ツナの水煮缶を食べる回数を少し増やしています。

かおり:1日に必要な鉄の推奨量は、18~64歳の女性だと月経なしの場合6.5mgです。ツナの水煮缶にはだいたい1缶あたり0.5gほど鉄が含まれています。

くにさん:あと、豆腐も鉄が多いようですね。

かおり:木綿豆腐1/4丁(75g)では鉄が0.7g、絹ごし豆腐では0.6g含まれています。もし、お食事で鉄分を摂ることが難しいようでしたら、主治医とご相談してくださいね。

かおり:たんぱく質源では、卵豆腐、具のない茶碗蒸し、豆腐、シーチキンの缶詰、魚、ヨーグルトを食べていると伺いましたが、何かお悩みなどありますか?

くにさん:たんぱく質源で他に食べられる食品や工夫できることはありますか?

かおり:お話を伺う限りでは、お腹の負担も考えたたんぱく質源を摂っていると思います。卵はだし汁を片栗粉でとろみをつけたところに入れて、かき玉のような形にしてもいいかもしれないですね。

かおり:たんぱく質についてのコラムは2023.11.19のコラム「たんぱく質はどのように摂取すれば良いの?(たんぱく質が多く含まれる食品、プロテイン)」に詳しく掲載しています。

たんぱく質はどのように摂取すれば良いの?(たんぱく質が多く含まれる食品、プロテイン)

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士) 米国登録栄養士の宮﨑です。今回はたんぱく質の摂取について解説したいと…

くにさん:高野豆腐はどうですか?食べていいものか分からず控えています。

かおり:高野豆腐は消化管への負担は比較的低い食品ですよ。

くにさん:体調をみつつ活用してみます!

かおり:話は変わりますが、先ほどカリウムを意識しているとお話されていましたが、どのようなお食事をされていますか?

くにさん:腸閉塞を起こす前は狭窄への対策で野菜を控えていました。でもカリウムは摂った方がよいという資料を入院中に栄養士さんからいただいたので、カリウムが多く含まれている野菜を腸閉塞を起こす以前よりは摂るようにしています。

かおり:カリウムはトマトジュースに多く含まれています。また、トマトは加熱をすると旨味が増すので、料理に使うのにぴったりの食材です。トマトジュースでリゾット風のお粥やトマトジュースで白身魚や豆腐を煮込むといったレシピにも使えますよ。

かおり:では最後に現在の食事で困っていることはありますか?

くにさん:いろいろと疑問が解決できて良かったです!ありがとうございました。しいて言うなら、白ご飯が大好きなのでお粥でしか食べられないのが切ないです。新米の季節なので、美味しい白ご飯を食べたいのです。来年のお楽しみですね。

かおり:新米の季節だからこそ、なおさら食べたくなりますよね。
今回は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

最後に

今回は流動食についてお伝えしてきましたが、いかがでしたか。

狭窄がある方は、よく噛んでゆっくり食べるよう心がけてください。また、極力柔らかく茹でたり、煮込むようにするとより安心です。

私は「こんな工夫してるよ」などアイデアがある方は、メールやSNSのDMなどでご連絡いただけると嬉しいです。

出典

*1

科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養
潰瘍性大腸炎・クローン病の安心レシピ

*2

クローン病の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識 第4版
http://ibdjapan.org/patient/pdf/02.pdf

*3

厚生労働省
特別用途食品制度のあり方に関する意見
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0129-3c.pdf

監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

福多 小夏
管理栄養士  

元病院管理栄養士。急性期病院に勤務し入院患者さんの栄養管理や主に生活習慣病患者さんへの栄養指導に従事し1人体制の栄養科で病院内を毎日駆け回る。子供の妊娠を経て夫の海外赴任のタイミングで病院を退職し子育てを経てグッテでの勤務を開始。親しみやすく、寄り添えるような管理栄養士になれるよう努めていきたいです。中学生と小学生の子どもを持ち、フレンチブルドッグをこよなく愛する2児の母です。

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。


くに
クローン病患者

15歳でクローン病の診断を受け入退院を繰り返す。大学卒業後は看護師として勤務。結婚後は事務職として働きながら育児に奮闘中。

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