執筆者:井本 かおり(管理栄養士)
こんにちは。管理栄養士のKaoriです!
潰瘍性大腸炎やクローン(IBD)の患者さんにとって、食事の基本の1つに「低残渣」がありますが、低残渣の詳しい内容はご存知ですか?
今回は潰瘍性大腸炎やクローン(IBD)の患者さん向けに低残渣食の調理のポイントを説明したいと思います。
低残渣(食)とは?
「残渣」の定義は曖昧です。
一般的に消化管で消化吸収されずに残ったカスが糞便として排出される状態を言います。
たとえば赤ちゃんの便にほうれん草やトウモロコシが丸々出てくる状態を残渣がある状態とイメージすると分かりやすいかと思います。
「残渣」が少ない食事を「低残渣(食)」と言います。
残渣が含まれている食品を調理する時のポイント
残渣が残りやすい食品でも、食品の部位や調理方法を工夫することで消化しやすい状態になります。
それでは食品の種類ごとに分けて詳しく説明していきましょう。
穀物類
お粥、ご飯、うどん、そうめん、お餅、食パンなど消化に良いものを選びます。
うどんやそうめんは茹で時間を増やし柔らかくするとより消化が良くなりますが、味や食感に影響も出るので、お腹の症状に合わせて調理時間を加減します。
焼きそばやラーメン、パスタは調理をする時に油脂類の使用量が多い事から注意が必要です。
惣菜パンやクロワッサン、菓子パンは原材料にバターなど油脂類が多いので「体調が悪い時」「狭窄」があるときは控えます。
全粒穀物(玄米、オートミール、雑穀米など)は「体調が悪い時」「狭窄」があるときは控えます。
いも類
じゃがいも、里芋は「体調が悪い時」「狭窄」があるときは皮をとり除き裏ごしをします。
長芋はいも類にはめずらしく生でも食べることが出来ますが、すりおろしてから加熱をします。
春雨は茹で時間を増やすとより消化が良くなります。
こんにゃくは「体調が悪い時」「狭窄」があるときは控えます。
野菜
「体調が悪い時」「狭窄」があるときは皮や種、硬い茎や繊維質の部分を取り除き、加熱をして食べます。
残渣が少ない野菜は
かぶ、かぼちゃ、カリフラワー、きゅうり、トマト、小松菜、なす、春菊、大根、玉ねぎ、チンゲン菜、ニンジン、白菜、ピーマン、レタス、ブロッコリー、ほうれん草 等です。
残渣を減らすための調理テクニックを確認していきましょう!
皮や種を取り除く
きゅうり、なす、トマト、ズッキーニなどは皮をむいて、トマトやきゅうりは種も取り除きます。
潰す・すりおろす
かぼちゃやじゃがいもは柔らかく茹でたり、電子レンジで加熱してから潰してポタージュにしたり、マッシュポテトにします。
冷凍食品売り場には、とうもろこしやブロッコリー、かぼちゃ、グリーンピースなど野菜を潰した状態で売られています。離乳食売り場でもフリーズドライの状態で裏ごしした野菜が販売されています。
商品をうまく活用する事で調理のひと手間を省く事が可能です♪
茹でる
「体調が悪い時」「狭窄」がある場合は生野菜を食べるのは避け、なるべく加熱して消化吸収されやすい調理方法をお選びください。油を使わない調理方法(蒸す、茹でる、煮る)がおすすめです。
電子レンジで蒸すと時短調理になります。電子レンジ調理のポイントは過去の記事にをご覧ください。
細かく刻む
ハンドブレンダーやミキサーで簡単に細かく刻むことで消化管への負担を減らすことができます。
みじん切りなど細かく切ってから茹でるよりは、ある程度大雑把に形のある大きさで茹でてから細かく切る方が柔らかく仕上がります。
実は葉野菜も根野菜も細かく切ってから茹でると中々柔らかいクタクタの状態になりません。
果物
消化管への負担が少ない果物は
バナナ、すいか、もも、リンゴ、梨、ぶどう、缶詰(みかん、もも、りんご、洋なし) です。
「体調が悪い時」「狭窄」があるときは皮や種を取り除き、可能な限りコンポートなど加熱をした状態で食べます。
きのこ類
活動期や狭窄があるときは避けます。
豆類
こしあんや茹であずき(缶)は残渣が少ない食品です。
豆腐や、豆乳、湯葉などの大豆製品も加工の段階で消化によい状態になっています。
大豆、ひよこ豆など豆そのものは「体調が悪い時」「狭窄」があるときは控えます。
海藻類
海苔は佃煮にすることでクタクタになり比較的残渣が少なくなります。
昆布やひじき、ワカメは「体調が悪い時」「狭窄」があるときは控えます。
魚介類
いか、エビ、かに、たこ、たらこ、貝類は「体調が悪い時」「狭窄」があるときは控えます。
過去の特集記事「狭窄がある方の食べ方の工夫」では食材を切る方法など調理方法を分かりやすく解説しています。ぜひご覧ください。
お勧めの低残渣レシピ
グッテレシピでは患者さまが実際に調理工夫をされているレシピがたくさん掲載されています。今回はその中から2つご紹介します。
「狭窄」で検索をしていただくと他にもたくさんのレシピを見ることが出来ますので、ぜひご活用下さい。
最後に
IBDの患者さんは症状に個人差が大きいです。
自分のお腹に合う食事を把握するのに、食事記録と体調の記録をつけるといいでしょう。
その場合毎日の食事を写真で記録をすることがお勧めです。
今回の記事を参考にご自身の体調に合わせて食品や調理方法を選択してくださいね。
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士
管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。
参考文献
~IBDにおける栄養学の科学的根拠と実践法~潰瘍性大腸炎とクローン病の栄養管理 講談社