
執筆者:平山 茂樹(株式会社メディカルトリビューン メディア事業本部)
世界IBDデーに合わせてお届けしてきた“株式会社メディカルトリビューン × グッテ共同企画”コラム。今回は最終回をお届けします。

専門医による診療、患者に安心感
札幌医科大学消化器内科教授の仲瀬裕志氏は、2021年から炎症性腸疾患(IBD)に特化した遠隔診療を実施している。連携先は釧路、帯広などの施設で、現在も市立釧路総合病院とは週1回の頻度で継続している。
診療は、連携先の医師が患者に同席する「D to P with D」形式で実施。通常の治療ではコントロールが難しい患者を対象に、オンラインで薬物療法の方針などを提案している。患者にとっては、「札幌医科大学消化器内科の専門医に相談できる」という安心感にもつながっている。

取り組みの原点は、2016年の着任時にさかのぼる。遠方から長時間かけて外来を受診するIBD患者の実情を目の当たりにし、「なんとかしなければならない」と感じたことがきっかけだ。その後、新型コロナウイルス感染症の流行が後押しとなり、2021年の本格始動につながった。
鍵はカルテの共有
IBD患者に対する「D to P with D」による遠隔診療は、2024年度診療報酬改定で保険診療として算定可能となった。仲瀬氏が今後の普及に向けた鍵として挙げるのが、カルテ共有システムの整備である。
札幌医科大学では地域医療連携ネットワークサービス「ID-Link」で連携先の施設と電子カルテを共有しており、遠隔からでも現地患者のカルテが閲覧可能な環境が整っている。「あとはインターネットで映像をつなぐだけで診療ができる。カルテの共有さえ実現すれば、全国どこでも同様の取り組みはすぐに始められるのではないか」と同氏はいう。
IBDに特化した遠隔診療は全国的にも先駆的な取り組みであり、新潟や長崎など離島を抱える他県でも類似の動きが出始めている。同氏は「患者が安心して地域で医療を受けられる体制が重要だ。遠隔診療により専門医不在の地域でも質の高いIBD診療を届けることが可能になる」と語った。

監修者

仲瀬 裕志
札幌医科大学医学部 内科学講座 消化器内科学分野 教授