グッテレシピ

IBD患者さん・ご家族の栄養・食事のお悩み解決のお手伝いーIBDで不足しがちなビタミンD・亜鉛とその補い方編ー

執筆者:斎藤恵子(管理栄養士・機能強化型 多摩小金井認定栄養ケア・ステーション責任者)

4月10日に開催されたオンラインセミナーでは潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)患者さんが注意すべきビタミン・ミネラルの不足とその対応について紹介しました。

本記事では、当日の内容を分かりやすく整理してご紹介します。


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IBDで不足するビタミン・ミネラル

IBD患者さんではビタミン・ミネラルの不足も起こりやすく注意が必要です。

不足しやすいビタミン・ミネラルとしては、鉄・亜鉛・ビタミンD・葉酸・ビタミンB12などがあります。

このビタミン・ミネラル不足についてはIBDによる炎症も関わりますが、同時に食事の摂取量との関係も示唆されています。

出典:斎藤恵子、第18回日本炎症性腸疾患学会、2022年

上のグラフは、ビタミンD(左)と亜鉛(右)について、
「それぞれの摂取量」と「血液の中の量」の関係をあらわしています。

例えば、このグラフによると、ビタミンDと亜鉛ともに食事の摂取量が少ない患者で、血液中のビタミンDの指標(血清25(OH)ビタミンD)と亜鉛の濃度が低い値にある傾向が見られました。

さらに、クローン病患者さんでは血清25(OH)ビタミンDが健康な方と比べて低かったことなどが報告されています。
また、亜鉛についても、クローン病の活動期において血液中の亜鉛の濃度が低くなることが報告されており、同時にIBDに関連する小腸を切除することによる短腸症候群でも亜鉛の欠乏症が生じることが報告されています。

ビタミンDのはたらきと補い方

ビタミンDのはたらき

ビタミンDは骨を作るために重要な栄養素です。具体的にはカルシウムとリンの腸管における吸収を助けるとともに、腎臓におけるカルシウムの再吸収も促進します。

IBDに対しては、消化管の上皮バリア機能の維持、腸免疫、腸粘膜の免疫の調整に重要な役割を果たしていると考えられています。

実際にビタミンDを補うことで、クローン病患者さんの手術リスクの減少や炎症マーカーの減少、生物学的製剤である抗TNF-α治療に対する反応の改善などの報告もあります。

ビタミンDの摂取推奨量

日本人の食事摂取基準2025年度版では、18歳以上の男女の1日のビタミンDの目安量は9μg、耐容上限量は100μgとされています。

ビタミンDの補い方

ビタミンDは、鰯、鱒、鮭、秋刀魚、鰻、鮍(かわはぎ)、真鰈(まがれい)、真加治木(まかじき)などの魚類に多く含まれています。これらの魚を日々の食事に取り入れることで、効率よくビタミンDを補うことができます。

そこで今回は、グッテレシピの中から、ビタミンDを多く含む魚を使ったレシピをご紹介します。手軽に取り入れられるものばかりですので、ぜひ参考にしてみてください。

鯖味噌缶白菜豆腐炒め by   ヤミハラスさん 

ビタミンD含有量9.5㎍

鯖味噌缶白菜豆腐炒め | グッテレシピ

潰瘍性大腸炎/クローン病/過敏性腸症候群/お腹の弱い方向けレシピ

鮭の甘酢焼き by   toeさん

ビタミンD含有量26.4μg

鮭の甘酢焼き | グッテレシピ

潰瘍性大腸炎/クローン病/過敏性腸症候群/お腹の弱い方向けレシピ

また、食事以外にも日光に当たることも重要です。症状が安定している場合は積極的に外に出てみましょう。

亜鉛のはたらきと補い方

亜鉛のはたらき

亜鉛は体内の300種類以上の酵素活性化に必要で、細胞の分裂や核酸の代謝にも重要な役割を担っています。

亜鉛の摂取推奨量

日本人の食事摂取基準(2025年版)では亜鉛の1日の推奨量は以下の通りです。

男性:
18~29歳: 9.0mg
30~64歳: 9.5mg
65歳以上: 9.0mg

女性:
18~29歳: 7.5mg
30~64歳: 8.0mg
65~74歳: 7.5mg
75歳以上: 7.0mg

また、1日の摂取耐容上限量は、男性で40~45mg、女性で30~35mgに設定されています。

亜鉛は牡蠣やブタレバー、牛肉赤身、小麦胚芽、カシューナッツ、卵などに含まれます。

グッテレシピの中から、亜鉛を多く含む食品を使ったレシピをご紹介します。手軽に取り入れられるものばかりですので、ぜひ参考にしてみてください。

牡蠣チャウダー by   harapekoさん

亜鉛含有量 19.0㎎

牡蠣チャウダー | グッテレシピ

潰瘍性大腸炎/クローン病/過敏性腸症候群/お腹の弱い方向けレシピ

まとめ

今回はIBD患者さんにおいて不足しがちなビタミンDと亜鉛について詳細を説明しました。

日々の食生活を工夫しながらビタミンDと亜鉛を摂取しましょう。

執筆者

齋藤恵子先生
管理栄養士・東京科学大学病院長参与 機能強化型 多摩小金井認定栄養ケア・ステーション責任者

管理栄養士として東京山手メディカルセンター(旧社会保険中央総合病院)、東京科学大学病院(旧東京医科歯科大学病院)で、長年にわたり炎症性腸疾患(IBD)の患者さまを中心に消化器疾患、糖尿病、高血圧、腎臓病など様々な患者様の栄養指導に携わり、健康と食生活の支援を行う。

また、「安心レシピでいただきます!―潰瘍性大腸炎・クローン病の人のためのおいしいレシピ」などの著書も執筆。

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