グッテレシピ

2025年1月17日

慢性便秘症の食事療法の最新動向とおすすめレシピ

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)
執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)







 慢性便秘症とは?

便秘は、本来は大腸から排出されるべき便が体内に留まることで、便が塊状または硬くなり、排便の頻度が減少する状態、または、残便感や閉塞感が伴い、排便が困難になる状態のことです。

慢性便秘症とは、このような便秘が長期間にわたり続き、日常生活に支障をきたすとともに、さまざまな疾患につながる可能性のある病態を指します。

慢性便秘症の有病率については研究によって異なりますが、一般的には人口の約10〜15%が該当するとされています(1)。

慢性便秘症は大きく分けて以下に分類されます:

ここからは、慢性便秘症に有効とされる食事療法について、国内外のガイドラインや最新の研究を基に紹介します。

 便秘と食物繊維

一般的に、便秘の際は食物繊維の摂取が推奨されます。食物繊維は水分を吸収してゲル状になることで便の性状を改善し、腸の動きを活発にする働きがあると考えられています。また、腸内細菌が食物繊維を分解する際に生成される短鎖脂肪酸ガス腸管の通過速度や運動性を向上させるとも言われています(2)。

ただし、食物繊維摂取の効果は摂取量が不足している場合に限られる可能性が指摘されています(3)。

日本人は食物繊維摂取量が不足していると言われているため、意識的に摂取することは有益と考えられます。一方で、どの食品が最も効果的かについてもさまざまな研究が進められています。

食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分類されます。

この分類に基づいた研究も多く行われていますが、慢性便秘症に対する効果において、どちらがより効果的かは明確になっていません(4)。
一方で、IBSの便秘型に対しては水溶性食物繊維が推奨されています(5)。

食物繊維が豊富な食品として、キウイフルーツプルーンサイリウム(オオバコ)が研究対象となっています。これらの食品を摂取することで、自然排便率や排便回数の増加が確認されています(6)。

日本ではグアーガム分解物(PHGG)の研究が進められており、排便回数の増加や便秘薬の使用量減少が報告されています。また、小麦由来の食品を避け、米や豆由来の食物繊維を多く含む食事についての研究も行われています(7)。

便秘と水分摂取

水分摂取も食物繊維と同様に推奨されることが多いです。十分な食物繊維摂取に加え、水分を多く摂取した場合、排便回数の増加が確認されています(8)。ただし、水分摂取量のみを比較した研究では、明確な効果は示されていないのが現状です(7)。

そのため、米国のガイドラインなどでは、食物繊維の摂取と合わせて水分摂取を積極的に行うことが推奨されています(4)。

水分摂取については以下の記事に詳細をまとめていますのでご興味ある方はご一読ください。

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まとめ

今回は慢性便秘症に対する食事療法に関する最新の研究とおすすめレシピを紹介しました。特に食物繊維については多くの研究が進められており、具体的な食品やサプリメントに関するさらなる研究が期待されます。また、食物繊維摂取時には水分摂取も意識することが推奨されています。

今後も最新の研究について随時紹介していきますのでぜひ楽しみにお待ちください。



参考文献:

(1) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39159626/
(2) https://pmc-ncbi-nlm-nih-gov.translate.goog/articles/PMC8538724/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc
(3) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21737769/
(4) https://www.giboardreview.com/wp-content/uploads/2023/05/AGA-guidelines-Constipation-June-2023.pdf
(5) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35337654/
(6) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34074830/
(7) 便通異常症診療ガイドライン2023, 日本消化管学会編, 株式会社南江堂2023年出版
(8) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9684123/

監修者

今井 仁
東海大学健康管理学|消化器内科 講師

消化器専門医。医学博士。2009年に東海大学を卒業し横浜市立市民病院で初期臨床研修と消化器内科医として勤務開始。東海大学にて博士を取得後2017年米国ミシガン大学に留学し腸内細菌の研究に従事。帰国後も継続して腸内細菌の研究、消化器内科の仕事、健診センターの仕事を掛け持ちし日々研鑽を積んでいる。

執筆者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士  

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

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