グッテレシピ

2024年7月19日

食中毒を防ぐサラダチキン(鶏ハム)の作り方~温度管理を徹底解説~

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)



低脂質で高たんぱく質の鶏のむね肉を使った「サラダチキン」は鶏ハムともいわれ、潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の方や筋トレやダイエットで脂質を控えたい方、そして一般の方まで幅広い方に支持されています。

サラダチキンはスーパーやコンビニなど色々な場所で買うことができますが、価格面などから自作をされている方も多いのではないでしょうか。

今回のコラムでは、サラダチキンを作る上での注意点についてお伝えします。


サラダチキンの調理方法と注意点

肉はしっかりと加熱すると、パサパサの食感になります。「サラダチキン」は味付けをした鶏むね肉をジップバッグなどの袋に入れて、低い温度でじっくり時間をかけて火を通す「低温調理」をすることで、やわらかくジューシーに仕上げています。しかし、食感を追求するあまり加熱不足になると食中毒菌が生き残ってしまうリスクがあります。

鶏肉に多い食中毒菌は?

食中毒の原因菌として気をつけたい細菌は「サルモネラ菌」と「カンピロバクター」。

特に、「カンピロバクター」は鶏刺しや鶏たたき、加熱不足の焼鳥などの原因食材により、1990年代後半に急増。2000年代に入ってからは、細菌による食中毒の発生件数で1位が続いています。

小売りの国産鶏肉の多く(32~96% 平均値65.8%)がカンピロバクターに汚染されていることが明らかとなっています。そのため「新鮮だから菌は少なく安全」ではなく十分に加熱して食べる必要があります。*1

カンピロバクターに感染すると、発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢、血便等の症状以外に、後遺症として神経疾患である「ギラン・バレー症候群」を発症することもあります。*2

管理栄養士
かおりさん

「サラダチキン」を安心して食べられるポイントを押さえていきましょう。

サラダチキンを作る上で食中毒を防ぐポイント

POINT1:調理時の中心部の温度管理

しっかりと加熱殺菌するには、肉の中心部が63℃になってから、さらに30分間の加熱を維持する必要があります。

具体的には厚さ3cm、重さ300gの鶏むね肉を63℃を維持したお湯で加熱した場合、肉の中心部が63℃まで上がるのに約70分、そこから加熱殺菌のため30分間温度を維持する必要があり、調理に計100分ほどの時間が必要です。*3

※食材の大きさや厚さ、鍋に同時に入れる肉の量、また湯量や鍋の大きさなど、条件により加熱時間は異なります。

POINT2:予熱を利用するレシピは禁物

画像は63~75℃で加熱した鶏ムネ肉の断面です。

中心部の温度が加熱温度になった時点での断面(上の画像)と中心部の温度が加熱温度になってから衛生基準まで加熱をした状態(下の画像)では、肉の見た目は変わらず安全な加熱をできたかどうか判断するのは不可能なことが分かります。

出典:食品安全委員会 食肉の低温調理



見た目では、食中毒の観点で十分に加熱をしているかが分からない為、

  • 塊肉の表面を焼いた後にアルミホイルで包んで保温をする
  • 肉をジッパー付き袋に入れて熱湯で数分加熱をした後お湯に漬けっぱなしにする

などの余熱を利用するレシピは、衛生的な温度管理が出来ないので注意が必要です。

管理栄養士
かおりさん

お湯に漬けっぱなしにするレシピを参考にする場合は、お湯の温度をこまめに測り、65℃以下にならないようにしましょう。

サラダチキンの保存期間

調理後は菌が繁殖する温度帯を避けるために急冷し、冷蔵庫保存の場合は3日以内に食べきるようにしましょう。冷凍保存する場合も2週間を目安に食べきるようにします。

管理栄養士
かおりさん

サラダチキン以外にもお肉を柔らかく調理する方法について、過去のコラムに調理の工夫を掲載しています。ぜひご覧ください。
https://learn.goodtecommunity.com/special_list/40/

サラダチキンを使ったレシピ

グッテレシピからサラダチキンを使ったレシピを紹介します。

メスティンでトマト煮込み
by ナオコさん


メスティンを使ったキャンプ飯へのアレンジは目から鱗!!ご自宅では小さなフライパンでも作ることが出来ます。

鶏とブロッコリーのアスリート飯
by Pentaさん


料理をつくる気力がない時に、コンビニで揃えられる材料を使ったレシピです♫

まとめ

しっとりジューシーで安心できるサラダチキンを調理する場合は、適切な温度管理が必要です。より安全にサラダチキンを作りたい場合は「低温調理器」の購入を検討してはいかがでしょうか。

万が一、食中毒と思われる症状が発生した場合には、自己判断で市販の下痢止め薬などを使用せずに、病院を受診しましょう。また、水分補給をしっかり行い、安静にすることも大事です。



参照資料
監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。

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