潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんが意識したい低脂質で鉄の多い食品

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)



潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の患者さんは、消化器の炎症によりビタミンやミネラルといった微量栄養素の不足が生じる事が多いことが知られています。

今回のコラムでは、不足が生じやすいミネラルの中から鉄について詳しく解説します。


IBDの患者さんが不足しやすい栄養素

潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の方は炎症による消化吸収の低下、食事摂取量および薬物療法の作用などでビタミンやミネラルなど微量栄養素の不足が起こりやすいことがわかっています。

IBDの方で不足しやすい微量栄養素:
鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、セレン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB12、葉酸

微量栄養素の中でもは潰瘍性大腸炎(UC)の方の内81%、クローン病の方の内39%の患者さんが不足していると言われています。人の体内で鉄が不足すると、赤血球の中に含まれるヘモグロビンが作れなくなることによって生じる、「鉄欠乏性貧血」につながります。

鉄の不足に気がつく方法は?

鉄など微量栄養素の不足によって現れやすい症状があれば、医師に相談し血液検査で微量栄養素に関する検査項目が基準値を下回っていないかを確認します。

鉄の摂取不足以外が原因で同じような症状が出る場合もあるので、自己判断をせず医師の診断を受けるようにしましょう。

鉄の不足によって現れやすい症状:
動悸・息切れ・疲労感、倦怠感・顔色不良・さじ状爪(爪が反り返る、割れやすい、もろい)・味覚障害、舌のひりひり感・集中力ややる気の低下

1日に摂りたい鉄の量は?

1日に摂りたい鉄の量についてIBDの方向けの摂取量についての科学的根拠はないため、食事摂取基準に準じて健康な人と同程度で十分と考えられます。

日本人の食事摂取基準(2020年度版)では1日に必要な鉄の推奨量(ほとんどの人が充足している量)は、

  • 18~64歳の女性では月経なしの場合6.5mg
  • 18~74歳の男性では7.5mg

です。

また耐容上限量(過剰摂取による健康障害の回避を目的とした量)は、

  • 女性では12歳以上で40mg
  • 男性では15歳以上で50mg

と設定されています。

通常の食事では耐容上限量を超えることはありませんが、サプリメントを多く摂取することで過剰になる場合もあります。

鉄が多い食品

鉄の多い食品は下の図の通りです。図を参考に体調に合った食品を摂るように意識をすると鉄の摂取を増やすことが可能です。

鉄の多い食品一覧

日本標準食品成分表2020年度版(八訂)よりグッテ管理栄養士が作成


ビタミンCを一緒に摂ることで鉄を吸収しやすくなります。ビタミンCを豊富に含む食品(柑橘類やキウイなど果物、ピーマン、ブロッコリー、かぼちゃなど緑黄色野菜)を一緒に摂るようにしましょう。

食事の摂取量が低下し食事から鉄などのミネラルやビタミンを摂ることが難しい場合、医師と相談しサプリメントを検討するようにします。

低脂質で鉄が多い食品を選ぶポイント

IBDの患者さんは低脂質の食品を選ぶことが多いと思います。低脂質で鉄が多い食品を選ぶポイントは、

  • 肉類については、鶏肉よりは牛肉や豚肉の方が鉄が多く含まれます。牛肉や豚肉を食べる場合は脂肪分の少ないもも肉やヒレ肉といった部位を選ぶようにします。
  • 魚介類は白身魚より赤身魚の方が鉄が多く含まれます。かつおやまぐろ、アジなど比較的脂質が低く鉄が多い食品を選ぶようにします。
  • 鉄が添加された商品を選ぶことも選択肢の1つです。例えば低脂肪乳やコーンフレークには鉄が添加されたものが販売されています。

グッテレシピから鉄が多いレシピ

グッテレシピに掲載されているレシピから、脂質が1人前5g以下で鉄が多いレシピをご紹介します。

グッテレシピから鉄の多いレシピを探す方法

①貧血をクリック     →   ②1食あたり鉄の量が2㎎以上の食事が検索できます

まとめ

IBDの患者さんが不足になりやすいといわれている鉄について今回説明しました。鉄の不足が気になる方は今回のコラムを参考に、普段の食事で鉄を多く含む食品を意識してみるところから始めてみましょう。

管理栄養士
かおりさん

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参照
  • 潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 講談社
  • 日本食品標準成分表2020年度版(八訂)
  • 日本人の食事摂取基準(2020年度版)
監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。