グッテレシピ

IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)患者さんの診断・生活課題が多国籍調査で明らかに

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:くにさん(クローン病当事者)

グッテでは米国の患者支援団体Global Healthy Living Foundation(GHLF)と共に炎症性腸疾患(IBD)患者を対象とし、IBDの早期診断・学業・就労への影響を把握するために多国籍アンケート調査を行いました。最終的に日本とアメリカ・イギリス・カナダ等(以下「海外対象国」)において、簡易オンラインアンケート調査を実施し、203名から回答を得ました。ご協力いただきました皆様、誠にありがとうございます。

今回はその結果について、簡単にご紹介いたします。


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調査概要

  • 実施期間:2025年5月8日〜12日(日本)、5月7日〜11日(海外)
  • 対象者:IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)患者
  • 回答者数:203名(日本52名、アメリカ98名、イギリス22名、カナダ12名、その他19名)
  • 調査方法:オンラインアンケート(ニュースレター、Instagram、Xを通じて募集)

アンケート結果まとめ

今回の調査では、発症から診断に至るまでの期間が「1年未満」と回答した人は、日本では55.8%と半数を超えた一方で、海外対象国では32.5%にとどまりました。

また、発症から診断までに5年以上かかったと回答した割合は、日本が21.2%、海外対象国が25.2%でした。

信頼できる医師や適切な治療に辿り着くまでの期間については、「1年未満」と回答した人が日本では48.1%であったのに対し、海外対象国では20.5%にとどまりました。

また、診断時期に関する自由記述からは、患者自身および医師のIBDに関する知識不足、症状の認識の難しさ、ならびに専門医へのアクセスの困難さが、診断の遅れにつながる可能性が示唆されました。

IBDが学業に与える影響について、「ある程度影響があった」「かなり影響があった」「とても影響があった」と回答した人は、日本で57.7%、海外対象国では62.8%と、いずれも半数を超える結果となりました。

就労への影響についても、日本では90.4%の患者が上記のいずれかの選択肢を選び、海外対象国でも86.9%に達しました。

これらの結果から、発症から診断までの期間や、信頼できる医師や治療に辿り着くまでの期間については、日本のIBD患者のほうが海外対象国の患者よりも短い傾向があることが示唆されました。一方で、IBDが学業や就労に与える影響は、国を問わず大きいことが明らかになりました。

アンケート結果詳細

Q1. 症状が出始めてから、クローン病や潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患(IBD)と診断されるまでに、どのくらいの時間がかかりましたか?

A1.

Q2. 信頼できる医師や治療にたどり着くまでにどのくらい時間がかかりましたか?

A2.

Q3.振り返ってみて、診断までの時間を短縮したり、診断後のケアをより良くしたりするために、何か役立ったと思うことはありますか?

 A3.(自由記述を一部抜粋)
日本の回答者

  • 詳細な症状の記録が診断や治療の手助けになった。
  • 下血を痔だと思い込んでいたため診断が遅れた。
  • 医師から疾患を否定されたので診断が遅れた。
  • 患者会や学校医に専門医を紹介してもらえた。

海外の回答者

  • 検査が不十分で診断まで長い月日がかかった。
  • 精神的な問題とされて取り合ってもらえなかった。
  • 医師に信じてもらえなかった。
  • 薬を処方して終了し、継続的な治療が受けられなかった。
  • 医師の知識不足により間違った診断をされた。
  • 家庭医と専門医の連携が治療に有益だった。
  • 医師が保険会社と交渉してくれ、治療薬の使用を認めてもらえた。

Q4. これまでの人生の中で、IBDと共に生きることがあなたの学業(学校、大学など含む)にどの程度影響を与えましたか?

A4.

Q5. これまでの人生の中で、IBDと共に生きることがあなたの就労にどの程度影響を与えましたか?

A5.

まとめ

今回はGHLFとの多国籍調査の結果を共有いたしました。発症から診断までの期間や、信頼できる医師や治療に辿り着くまでの期間については、日本のIBD患者のほうが海外対象国の患者よりも短い傾向があることが示された一方で、IBDが学業や就労に与える影響は、国を問わず大きいことが明らかになりました。

海外の医療システムでは日本のように患者の体調にあわせて受診できないことも多く、また加入している保険によって使える治療が異なります。今回の調査でも、海外の回答者の中には診断までに数十年を要した方も複数おられました。このような医療事情の違いも反映されていることが伺われます。

またIBDの症状や治療はその人の生活・人生に大きく影響します。痛みや頻回な排泄、貧血などの苦痛はもちろん、トイレへの不安や食事の悩み、治療の拘束時間や経済的な問題など、疾患による影響は計り知れません。今後、学業や就労への影響をできるだけ少なく、様々な機会が奪われないように、治療の発達や社会の仕組みが求められます。今後もグッテとGHLFは、IBD患者と協力しながら患者の声を社会に届け、患者会や製薬企業、患者さんをサポートする団体や医療従事者等と連携し、IBD患者が直面する課題の解決に尽力してまいります。

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監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

くに
看護師|保健師

高校生でクローン病と診断。入退院を繰り返しながら進学・就職・結婚を経て現在は子育て中。先輩患者さんの存在や体験談で「私は大丈夫」と思えた経験から、患者さん同士の体験のシェアの場や、ちょっと気持ちが楽になる情報を提供したいと模索しています。経管栄養歴10年超。本の虫。

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