グッテレシピ

2025年3月21日

おにぎりの具に迷ったら?梅干しの栄養とIBD・IBSの方向けポイントを解説

監修者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)
執筆者:井本 かおり(管理栄養士)

おにぎりは、朝食やお弁当、補食(間食)、アウトドアなど、さまざまなシチュエーションで食べる機会の多い、日本のソウルフードです。

おにぎりの具ランキングでは、鮭、ツナマヨ、梅干し、明太子、昆布などのオーソドックスな具材が、常に上位にランクインしています。

今回は、その中でも梅干しに注目し、栄養価や潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)の方に向けた選び方のポイントを紹介します。


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 梅干しの栄養と効果

おにぎりの具やご飯のお供、調味料の代わりとして長年親しまれている梅干しの魅力を紹介します。

1. 保存性の高さ

梅干しには、抗菌作用がある塩分が約20%、クエン酸などの有機酸が3~4%*1含まれています。

塩の効果と合わせて、長期保存が可能な保存食として昔から重宝されており、お弁当や持ち歩き用のおにぎりに適しています。

2. 味のバランスと食欲増進効果

梅干しは酸味と塩味の絶妙なバランスが特徴で、ご飯の甘みを引き立て、飽きのこない味わいを生み出します。また、酸味が唾液の分泌を促し、食欲増進効果が期待できるため、暑い夏や食が細くなったときでも食べやすい具材として親しまれています。

3. 疲労感軽減効果と注意点

クエン酸には、疲労感を軽減する効果が期待できます*2。しかし、梅干し100gには約20gの塩分が含まれています。つぶした梅(練り梅)に換算すると、小指の第一関節ほどの量(約5g)で、食塩相当量は約1gとなります。

日本人の食事摂取基準(2025年度版)では、食塩の目標摂取量は成人男性で7.5g、成人女性で6.5gとされています。そのため、疲労軽減効果を期待して梅干しを食べすぎると、塩分過多になる恐れがあります。

梅干しを取り入れる際は、これらの目標値を意識し、適量を心がけることが大切です。

 潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)の方向け|おにぎりと梅干しの選び方

  • 白米を選ぶ
    • 玄米や雑穀米よりも消化がよい白米の方が腸への負担が少ないです。
    • 再燃期(症状が悪化している時)は、おにぎりよりは柔らかめに炊いたご飯やお粥の方が適しています。
  • 少しずつ、しっかりとよく噛んで食べる
    • おにぎりは一口の量が多くなりがちです。少量をゆっくりよく噛んで食べることが大切です
  • 温めて食べるのもおすすめ
    • 冷めたご飯がお腹に合わないと感じる方は、軽く温めるとよいでしょう。
  • 皮を取り除いたり、裏ごしして食べる

皮は消化しにくいため、狭窄や調子が悪い時は取り除くとよいでしょう。

  • 添加物が少ないものを選ぶ

一部人工甘味料や添加物が腸内細菌の乱れやIBDの症状悪化に影響を及ぼす可能性があるため、可能な範囲で避けるのがよいでしょう*3。

 過敏性腸症候群(IBS)の方向け|おにぎりと梅干しの選び方

  • 少しずつ、しっかりよく噛んで食べる
    • おにぎりは一口の量が多くなりがちです。少量をゆっくりよく噛んで食べることが大切です
  • 温めて食べるのもおすすめ
    • 冷めたご飯にはレジスタントスターチ(難消化性でんぷん, RS)が増加するといわれています。
    • 現時点では、RSとIBSの症状との明確な関連は十分に解明されていませんが、一部の研究では「RSがIBSの症状を悪化させる可能性がある」と報告されています*4。
    • 冷めたご飯が合わないと感じる方は、電子レンジで軽く温めるとよいでしょう。

梅干しはMonash大学のFODMAPテストでは未検証ですが、ソルビトールが0.4g/100g含まれていることから、少量なら問題なくても、食べすぎると症状が出る可能性があります。

市販の梅干しには還元水あめやはちみつ、果糖ぶどう糖液糖などの高FODMAP甘味料が含まれている場合があるため、原材料の確認が必要です。

まとめ

梅干しは、おにぎりの具として長年保存食として親しまれてきた食品です。塩分と酸味のバランスが絶妙で、ご飯との相性が良く、おにぎりの風味を引き立ててくれます。一方で、特に塩分が多いことから、体調に応じた選び方が大切です。

おにぎりの具に迷ったときは、今回のコラムを参考にしながら、梅干しおにぎりを美味しく楽しんでみてください。

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監修者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

執筆者

井本かおり
管理栄養士|日本栄養士会食
物アレルギー分野管理栄養士

管理栄養士として、病院、行政(学校給食)、こども園で主に献立作成、栄養指導、食育などに従事。家では過敏性腸症候群(IBS)の息子と一緒に低FODMAP食事療法を実践中。忙しい時にでも簡単においしく出来るレシピが得意です。


参考文献:

*1 吉田誠, 曽我綾香, 中山由佳, 眞壁優美. 使用塩類の違いが梅干しの品質に与える影響. 神奈川県農業技術センター研究報告. 2010, 153, p. 61-64.

*2  梶本 修身ほか レモンクエン酸の疲労感軽減効果─疲労感を自覚する625名を解析対象としたプラセボ対照WEB調査─.Jpn Pharmacol Ther 2007 35(7) 821-8

*3 潰瘍性大腸炎とクローン病の栄養管理 講談社 p.111-115

*4 Tuck, C. J., & Barrett, J. S. (2017). "Re-challenging FODMAPs: the low FODMAP diet and its modification for managing functional gut symptoms." Gut.

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