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潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)患者が知っておきたいエネルギー・たんぱく質

執筆者:斎藤恵子(管理栄養士・機能強化型 多摩小金井認定栄養ケア・ステーション責任者)

潰瘍性大腸炎やクローン病(IBD)の治療では、薬物療法が中心となりますが、病状や症状に応じて必要な栄養を過不足なく摂ることが、病気の安定やQOLの維持につながると考えられています。今回は2025年11月19日に行われたIBDのための食と栄養セミナー10回シリーズの第2回「IBDとエネルギー・たんぱく質の必要量」の内容をもとにエネルギーとたんぱく質にフォーカスを当てて、その考え方と実践ポイントを整理します。

エネルギーとは何か:体を動かす「土台」

エネルギーは、呼吸・体温維持・内臓の働きなど、生命を維持するために常に消費されています。十分なエネルギーが摂取できない状態が続くと、体は筋肉を分解してエネルギーを補おうとし、体重減少や筋力低下につながります。

IBDだからといって常に高代謝(エネルギーの消費が多い状態になるわけではありませんが、活動期、炎症が強い時期、術前後、吸収不良がある場合には、エネルギーの必要量が増えることがあります。

一般的には、体重1kgあたり30〜35kcal/日が一つの目安とされ、体重60kgの方であれば1日約1,800〜2,100kcalが必要量となります。ただし、活動量や体格、病状によって調整が必要です。

なお、痩せたい人や太りたい人の場合、理想体重を使って自分に必要なエネルギーを算出することができます。理想体重は以下のやり方で算出できます。

理想体重 (Kg) = 身長 (m) × 身長 (m) × 22

理想体重を使うべきかどうかは主治医の先生や管理栄養士の先生に相談しましょう。

IBDで意識したいエネルギー源(糖質)の選び方

エネルギー源として最も重要なのは糖質です。IBDの活動期では、刺激が少なく消化吸収しやすい糖質を中心に選ぶことが勧められます。また寛解期は消化器症状がでないことを確認しながら徐々に食品のバラエティを増やすことが求められます。具体的な食材については下記を参考にしてください。

症状に合わせた選び方

急性期(腹痛・下痢が強いとき)
・ 白米、おかゆ、雑炊
・ うどん
・ じゃがいも
・ 食パン

※温かいメニューがおすすめ

寛解期(ある程度食べられる時)
・ 白米、雑穀米、玄米など
・ オートミール、シリアルなど
・ パスタ(グルテンフリー含む)
・ さつまいも、かぼちゃ
・ レジスタントスターチを含む食品も適度に

※レジスタントスターチとは、ヒトの小腸までは消化されず、大腸に届くでんぷん、および、でんぷん分解物の総称で雑穀や豆などの穀類、コーンフレークなどに含まれています。 

栄養補給が必要な時
・ マルトデキストリン

※マルトデキストリンは、でんぷんを分解して作られる糖質で、消化がほぼ不要で腸への負担が少なくエネルギー源として手軽に利用しやすいのが特徴です。

一方で、糖質の中には腹部膨満感や下痢を悪化させる可能性がある食品もあります。以下の情報を参考にしてください。

IBDの方は控えたい糖質

① 高FODMAP(腸内発酵が強い)
※低FODMAP食について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
https://learn.goodtecommunity.com/special_list/02/

② 精製糖(ショ糖・ブドウ糖果糖液糖など)
清涼飲料水・菓子類
加工食品
→ 炎症性腸疾患との関連を示す研究がある。症状悪化の可能性があることに加え、血糖変動が大きく急性期では下痢を悪化させることあり。

③ 難消化性糖アルコール(ソルビトールなど)
ガム・飴・ゼリー飲料・清涼飲料水など
→ 浸透圧性下痢を起こしやすい。

体の約15〜20%はたんぱく質でできており、筋肉や臓器、免疫機能、腸粘膜の修復に欠かせない栄養素です。IBDでは、活動期には体重1kgあたり1.2〜1.5g/日、寛解期でも約1.0g/日のたんぱく質摂取が推奨されています。

重要なのは「量」だけでなく「質」「タイミング」です。1食あたり20〜30gを目安に、3食に分けて摂ることで、効率的に体づくりをサポートできます。肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などをバランスよく組み合わせることがポイントです。

なお、タンパク質の種類については「動物性はダメ・植物性がよい」という極端な考え方ではありません。
大切なのは、赤身肉・加工肉を控えること魚・鶏肉・卵・低脂肪乳製品+大豆・豆類・全粒穀物を組み合わせること動物性も植物性も使うが、質とバランスを重視することです。

エネルギーとたんぱく質は「セット」で考える

たんぱく質をしっかり摂っていても、エネルギーが不足していると、たんぱく質は体づくりではなくエネルギー源として使われてしまいます。そのため、エネルギーとたんぱく質は常にセットで評価することが大切です。

不足が続くと、サルコペニア(筋肉量低下)や免疫力低下、IBDの予後悪化につながる可能性があります。一方で、過剰摂取も腸症状の悪化や代謝異常を招くことがあるため、極端な食事は避けましょう。

栄養状態をどう評価する?日常でできるチェック

栄養状態は、体重やBMIだけでなく、体重変化食事量血液検査筋力(握力)などを組み合わせて評価します。体重は毎日同じ条件で測定することが理想で、意図しない体重減少が続く場合は、早めに医療者へ相談することが重要です。

おわりに:無理のない「自分に合った食事」を

私たちの体は、毎日食べているものからつくられ、調子が整えられています。特定の食品だけに頼るのではなく、いろいろな食品を少しずつ、バランスよく取り入れることが大切です。体調や病気の状態に合わせて、無理のない範囲で「自分に合う食事」を見つけていきましょう。

執筆者

斎藤恵子先生
管理栄養士・機能強化型 多摩小金井認定栄養ケア・ステーション責任者

管理栄養士として東京山手メディカルセンター(旧社会保険中央総合病院)、東京科学大学病院(旧東京医科歯科大学病院)で、長年にわたり炎症性腸疾患(IBD)の患者さまを中心に消化器疾患、糖尿病、高血圧、腎臓病など様々な患者様の栄養指導に携わり、健康と食生活の支援を行う。
また、「安心レシピでいただきます!―潰瘍性大腸炎・クローン病の人のためのおいしいレシピ」などの著書も執筆。

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