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2024年12月13日

IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)治療における経腸栄養・栄養剤(エレンタール等)の特徴と飲み方の工夫

監修者:今井 仁(東海大学健康管理学|消化器内科 講師)
執筆者:宮﨑 拓郎(米国登録栄養士)



今回は潰瘍性大腸炎やクローン病などのIBDの中で、特にクローン病患者さんが治療の選択肢として用いることの多い経腸栄養について紹介させていただきます。



 経腸栄養とは?

経腸栄養は口や胃などの消化管を通して栄養剤を投与する方法です。病気の治療や栄養補助、または消化管を安全に使用できない場合などに用いられます。

方法は2つあり、口から栄養剤を摂取する方法と、チューブを用いて直接的に胃や腸に投与する方法があります。

また栄養素が含まれた輸液を直接的に血液に投与する静脈栄養という方法もあります。静脈栄養は重度の炎症や腸閉塞など消化管を使用して栄養を摂取することが難しい場合にのみ使われます。よって経腸栄養が可能な場合は、経腸栄養が静脈栄養より優先されます。

 経腸栄養剤の種類と特徴

経腸栄養剤は製品に含まれる栄養素の構成によって成分栄養剤消化態栄養剤半消化態栄養剤濃厚流動食の4つに分類されます。

「表19 経腸栄養剤の種類と特徴」(1)をもとに作成

IBDでよく活用されるのは成分栄養剤のエレンタールです。エレンタールの特徴はたんぱく質が分解されたアミノ酸が使用されていることであり、消化や吸収の能力が落ちているIBD患者さんによく使用されます。

どの栄養剤が用いられるかは医療機関や先生、また患者さん個々人の状況によって異なります。

 IBD治療における経腸栄養の位置付け

IBD治療において経腸栄養は術後や体重が十分に増えない時の栄養補助を目的として使われることもありますが、クローン病では寛解導入・維持を目的として使われることがあります。

特に小児のクローン病患者さんに対しては、ステロイドと比べて経腸栄養療法の方が腸管の粘膜の改善が有意に高いことが報告されており(2)、寛解維持に有効であったという報告(3)もあります。このようなことからエレンタールはIBD治療において今も重要な治療の選択肢となっています。

栄養剤を飲む時の工夫

栄養剤は独特の風味のものもあり、飲みにくいことや消化器症状が出てしまうこともあります。そのような場合は一度飲み方が適切であるかを確認してみましょう。

エレンタールは調整後にすぐ飲むことが進められます。これは微生物が繁殖しやすいことが理由です。作り置きは避けましょう。

また飲む速度が早い場合、体にうまく吸収されず下痢になってしまうことがあります。一気に飲むのではなく、エレンタール1包あたりおよそ20-30分かけて飲むことが重要です。

その他調整方法含めて様々な注意点があります。詳細は製造元のEAファーマさんがまとめていますのでリンクをご確認ください。

https://www.eapharma.co.jp/patient/elental/how-to

エレンタールには10種類のフレーバーがあります。一つのフレーバーが合わない場合は別のフレーバーを試してみましょう。

また液体が難しい場合にはゼリー状のものやムース状にすることも一案です。ゼリーミックスなどは薬局においてあることも多く、在庫がない場合は取り寄せてもらえるので、ぜひ薬局で相談してみましょう。
エレンタールの飲み方の工夫についてはIBD患者団体であるIBDネットワークさんがまとめた「エレンタールってどうよ!?」という冊子がありますのでぜひご参考にしていただければと思います。

https://ibdnetwork.org/wp02/wp-content/uploads/cc63002299b8d6d4456801a85e1cac31.pdf

エレンタールの服用が難しい場合はエレンタール以外の栄養剤に切り替えることも選択肢となります。エンシュアやラコールなどを選択される患者さんも多いです。ぜひ主治医の先生に相談してみましょう。

まとめ

今回はIBD治療における経腸栄養の位置付けや特徴、そして飲み方の工夫について紹介しました。現在IBD領域では生物学的製剤やJAK阻害剤などの治療の選択肢が増えている一方で、いまでも寛解導入・維持を目的とした経腸栄養療法は重要な治療の選択肢となっています。

栄養剤とは長く付き合わなければならないことも多いので主治医の先生に相談したり、他の患者さんの飲み方の工夫などを参考にしながら自分に合った栄養剤の服用方法を模索していきましょう。



参考文献:

(1)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000350338
(2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28131521/
(3)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17059514/

監修者

今井 仁
東海大学健康管理学|消化器内科 講師

消化器専門医。医学博士。2009年に東海大学を卒業し横浜市立市民病院で初期臨床研修と消化器内科医として勤務開始。東海大学にて博士を取得後2017年米国ミシガン大学に留学し腸内細菌の研究に従事。帰国後も継続して腸内細菌の研究、消化器内科の仕事、健診センターの仕事を掛け持ちし日々研鑽を積んでいる。

執筆者

宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士  

Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。

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