執筆者:福多 小夏(管理栄養士)
今回は潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)患者さんにとって貴重な栄養源である大豆の魅力についてお伝えします。大豆から作られる食品にはどんな種類があるのか、またその栄養価について詳しく見ていきたいと思います。また、体調に合わせた大豆製品の選び方も参考にしていただけると嬉しいです。
大豆の魅力
大豆は、「畑の肉」といわれるほど他の植物性食品と比べてたんぱく質を豊富に含んでいます。その他、IBD患者さんがよく食べられている鶏肉と比べてみると、鶏肉にはほとんど含まれていない鉄やカルシウム、食物繊維なども含まれています。これが魅力の一つだと思います。
さらに、大豆には大豆イソフラボンなどの微量成分も含まれています。
大豆イソフラボンは聞いたことがあるという方も多いと思いますが、女性ホルモン(エストロゲン)と似ている分子構造を持つため、体内でエストロゲンと似た作用を生じると言われています。
期待できる効果としては、抗酸化作用、更年期障害の予防や改善、ストレス緩和などがあります!
大豆から作られる食品
大豆を蒸したもの:水煮・ドライパック
さらにこれを発酵させたものが、味噌、醤油、納豆です。
大豆を茹でて絞ったもの:豆乳
そして、豆乳の絞りかすがおからです。豆乳を加熱したときにできる薄い膜を引き上げたものが湯葉で、豆乳ににがりを加えて凝固させたものが豆腐です。さらに豆腐を凍らせて乾燥させたものが凍り豆腐(高野豆腐)、揚げたものが生揚げ(厚揚げ)、がんもどき、油揚げです。さらに詳しく説明すると、生揚げは厚めに切った木綿豆腐を水切りして油で揚げたもの、がんもどきは水切りした豆腐に野菜、ごま、昆布などを混ぜ、平たい丸形にして揚げたもの、油揚げは薄く切った豆腐を水切りして二度揚げしたものです。
大豆を煎ったもの:煎り豆
煎り豆は節分の豆として食べられており、この煎り豆を挽いたものがきなこです。
大豆から油を抽出したもの:大豆油
大豆からこんなにたくさんの食品が作られているんですね!
どれも身近で簡単に手に入る食品ばかりです(^^)
最近では、大豆ミートや大豆から作られた麺が注目されていて、さまざまなメーカーさんから販売されています。お気に入りの商品を探してみるのも楽しそうですね。
大豆製品の栄養価
では、ここから大豆製品の栄養価を詳しく見てみましょう。
食品の量は1食分を目安にしました。豆腐は1/2丁、納豆は1パック、生揚げ、油揚げは1/2枚、きなこは大さじ1杯分、がんもどきは大きめサイズ1枚、凍り豆腐は1枚、枝豆は10さやなどです。
大豆から油が抽出できることからも分かるように、全体的に脂質が含まれていることに注意が必要です。
量を調整する、他の料理や前後の食事で調整するなど工夫してください。
それでは、それぞれ栄養別にランキング形式で見ていきましょう♪
脂質が多いランキング(1食分当たり)
第1位 | がんもどき(16.8g) |
第2位 | 生揚げ(8g) |
第3位 | 木綿豆腐(6.8g) |
脂質が少ないランキング(1食分当たり)
第1位 | 大豆もやし(0.6g) |
第2位 | 枝豆(0.8g) |
第3位 | きなこ(1.2g) |
がんもどきや生揚げ(厚揚げ)は見た目からも、やはり脂質が多いんですね!
そうですね!ちなみに油揚げの脂質は1/2枚当たり4.7gですが、油抜きすると3.9gとなり、1/2枚当たり0.8gの脂質を抑えられることが分かりました。
たんぱく質が多いランキング(1食分当たり)
第1位 | がんもどき(15.2g) |
第2位 | 湯葉(10.7g) |
第3位 | 木綿豆腐(10.1g) |
鉄が多いランキング(1食分当たり)
第1位 | がんもどき(3.6mg) |
第2位 | 豆乳(2.4mg) |
第3位 | 木綿豆腐(2.3mg) |
鉄は加熱調理しても壊れにくい栄養成分ですので、煮たり焼いたりいろいろな料理に重宝します。
カルシウムが多いランキング(1食分当たり)
第1位 | がんもどき(270mg) |
第2位 | 生揚げ(180mg) |
第3位 | 木綿豆腐(139.5mg) |
牛乳(コップ1杯)でカルシウム220㎎なので、同じくらいのカルシウムが補給できるんですね!
そうですね。また、脂質の多かった「がんもどき」や「木綿豆腐」はたんぱく質や鉄、カルシウムも多く、栄養価が高いことがわかりましたね(^^)
食物繊維が多いランキング(1食分当たり)
第1位 | おから(5.8g) |
第2位 | 大豆・ゆで(4.3g) |
第3位 | 納豆(2.7g) |
食物繊維が少ないランキング(1食分当たり)
第1位 | 油揚げ(0.2g) |
第2位 | 豆乳、湯葉、凍り豆腐(0.4g) |
第3位 | 生揚げ(0.5g) |
大豆製品の選び方
寛解期では厳しい食事制限は必要ありませんが、脂質を比較的多く含んでいる「がんもどき」は小さめのものを選ぶようにする、味付けをする前に熱湯をかけて油抜きをするなどして調理してみてください。脂質を抑えることで、その分他の食事に油を回せるようになります。
また、枝豆は他の野菜とくらべてたんぱく質が多く含まれています。これからが旬の季節になりますので、体調がよいときに手軽にたんぱく質補給ができます。
活動期では低脂質食が推奨されているため、できるだけ脂質が少ないものを選ぶようにし、量は少量から始めて消化器症状が出ないか確認してみましょう。
また、食物繊維に関しても同様に、食物繊維が多く含まれているものは避けるようにしましょう。
大豆製品をバランスよく普段の食事に摂り入れることでたんぱく質、食物繊維、鉄分、カルシウムなどの栄養素を補給できると思います。
大豆製品を使ったレシピのご紹介
はるさんレシピ「辛くない麻婆豆腐」
マイメロママさんレシピ「焼き厚揚げのニラ肉味噌のっけ」
監修者
宮﨑 拓郎
米国登録栄養士|公衆衛士学修士
Academy of Nutrition and Dietetics (米国栄養士会)所属 Registered Dietitian (登録栄養士)。ミシガン大学日本研究センター連携研究員。アメリカミシガン大学公衆衛生学修士(栄養科学)修了。大学病院等での勤務を経て米国登録栄養士取得。同大学病院消化器内科で臨床試験コーディネーターとして低FODMAP食の研究等に従事。帰国後コロンビア大学監修クリニックなどで保険適応外栄養プログラム立ち上げ、食事指導などに従事。講談社より「潰瘍性大腸炎・クローン病の今すぐ使える安心レシピ 科学的根拠にもとづく、症状に応じた食事と栄養」などを共著にて出版。ニュートリションケアなど管理栄養士向けの執筆多数。
執筆者
福多 小夏
管理栄養士
元病院管理栄養士。急性期病院に勤務し入院患者さんの栄養管理や主に生活習慣病患者さんへの栄養指導に従事し1人体制の栄養科で病院内を毎日駆け回る。子供の妊娠を経て夫の海外赴任のタイミングで病院を退職し子育てを経てグッテでの勤務を開始。親しみやすく、寄り添えるような管理栄養士になれるよう努めていきたいです。中学生と小学生の子どもを持ち、フレンチブルドッグをこよなく愛する2児の母です。